「東京五輪がなければ、たぶん、帰ってきていないと思います」
「結局、目標を達成することはできなかったですけど、それまでやってきたことは無駄になっていなかったんですよね。日本に帰ってきて、レッズで一生懸命プレーすることで、選手としての幅が広がったり、セットプレーのキックのコツをつかんだり。そういう意味では、この1年半、日本に帰ってきて、そこを目指したことで、自分自身はすごく成長できたと思うんです。
「去年はコンスタントに前目のポジションをやらせてもらえたことによって、練習も含めて、ゴール前でプレーするシーンが数多く訪れました。今まで、そうしたポジションは経験していなかったので、この場面ではGKが出てくる、もしくは引くという予測も、最初はできない状態でした。
それが、だんだんとDFはこう対応するのか、GKはこう動くのかというのが分かるようになり、毎シーンが自分の経験になっていったので、すごく成長できたシーズンだったと感じています」
「ゴールを目指しているという点では、そこはドイツで学んできたことなので、シーズン当初から変わらなかったと思います。ただ、目指していることは変わらないですけど、シーズン後半戦のほうが、よりそれがプレーとして表現できるようになりました。チームメイトとの息が合ってきたことも理由のひとつですけど、ゴール前で自分がチャンスになりそうなシーンは増えたと思っています」
「(日本に)帰ってきたら、レッズは味方同士が近い距離でパス交換するサッカーを目指していた。そうしたスタイルのサッカーは今まで経験したことがなく、言ってしまえばドイツとは真逆だったんです。でも、そのなかで、自分のよさをどう出して、どう周りを活かすかを、かなり考えました。
「今までは自分でも自分のキックが分からなかったところがありました。CKでも、そこを狙っているつもりではいましたけど、感覚の部分も大きかったので、たまたまうまくいけば成功するというキックでした。でも、練習していくうちに、自分の技術が安定したというか。
「次は2023年のワールドカップになりますけど、次の目標に向かってやるしかないと思っています。努力しても報われないと言う人もいるかもしれませんが、目標に向かって続けていけば、最後にはこんなに素晴らしいことがあるということを、自分のサッカー人生を通して、子どもたちにも見てもらいたいし、見せたいんです」
「去年の優勝は、もう過去に成し得たこと。今シーズンは周りも変わっているだけに、自分たちも変わっていかなければいけない。去年のことにすがっているというか、自分たちはリーグ優勝したと思っていたら、足元をすくわれると思っています」
「私自身も、先輩たちのキラキラしている姿を見て、自分もそうなりたいと思ってやってきているし、目指してきたんです。今、オリンピックが開催されていて、スポーツの力ということが言われていますけど、そこがプレーというかサッカー選手としての原点にはあるんです。目標に向かって一生懸命にやることで得たこともたくさんありますし、それを大事にして、見せ続けることができればと思っています」
(取材/文・原田大輔)