覚醒の予感が漂っている。
9月11日の横浜FC戦では、新境地を開くようなプレーを随所に披露。浦和レッズの汰木康也は、プレーエリアを問わずに存在感が増してきた。
今季のリーグ戦初ゴールは、目を見張るものだった。
ペナルティエリアの中央付近で相手のマークを外してフリーになると、小泉佳穂からの鋭いクロスを技ありのヘディングでゴールに変えてみせた。
本人は照れ笑いを浮かべながら居残り練習の成果が出たことを明かした。
「平川忠亮コーチが付き合ってくれたおかげです。キーパーを入れて、シンプルにサイドからクロスを上げてもらう形でしたが、練習ではまともに頭に当てることができなくて……。それなのに、あきらめずによく一緒に練習してくれたと思います」
手応えを得ているのは、ゴールの形だけではない。中央で仕事をする回数が増えていることを前向きに捉えている。
「外だけではなく、中でもいいプレーができています。その流れで、あのシーン(得点場面)も生まれました」
昨季までは左サイドのタッチライン沿いでボールを受けて、持ち味のドリブルを生かすことが多かったものの、今季は武器を有効に使える場所が広がった。
1トップの江坂任、トップ下の小泉とのコンビネーションがよく、中央付近でも頻繁に前を向き、仕掛けている。
横浜FC戦でも開始4分に真ん中から独力でペナルティエリア内に侵入し、シュートまで持ち込んだ。
61分にもボックス内の中央でパスを受けて、ドリブルでひとり、ふたりと抜き、好機をつくっている。
いずれもゴールにつながらず、「最後のところはずっと課題。もっとこだわってやっていきたい」と反省したものの、違いは生み出した。
「以前よりもドリブルを生かせるようになってきました」
密集したエリア内をするすると抜けていくドリブル姿は、いまをときめくイングランドのスターを彷彿とさせる。
今季、英国史上最高となる152億円(推定)の移籍金でマンチェスター・シティに加入したイングランド代表ジャック・グリーリッシュだ。
レッズのチームメイトからは「ぬるぬるしたドリブルが似ている」と言われており、本人も昨季のアストン・ビラ(イングランド)時代から注目している。同じ95年生まれで意識するところもある。
「動画を見ると、似たようなボールの持ち方をしているけど、グリーリッシュはゴールをばんばん決めている(昨季)。そこは参考にしたい」
開幕から21試合目。今季はチーム最多の4アシストを記録しているが、納得はしていなかった。
「ずっと、自分にゴールがほしいと思っていた。遅くなったが、やっと取れた」
点を取るイメージは、膨らんでいる。9月11日の1本をきっかけにラッシュが始まることを期待したい。
(取材/文・杉園昌之)
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