今年の3月、ラッパーのリル・ナズ・XがMSCHF社とコラボし販売した「サタンシューズ」を巡り、ナイキは販売元のMSCHFを提訴した。問題の発端となった「サタンシューズ」は、ナイキの「エアマックス 97」をベースに、五芒星のモチーフや、「LUKE 10:18(ルカによる福音書10章18節)」という文字が書かれている。そして赤いソールには、赤いインクにMSCHFのデザインスタッフの血液1滴を混ぜた液体が詰められており、販売に出された665足は即完売となった。
MSCHFが無許可で作った「サタンシューズ」は、その見た目から消費者を混乱させ、ナイキ製の商品だと誤解を生んだとして、ナイキはMSCHFを商標権侵害で訴えたかたちだ。最終的には、MSCHFが同商品を自主回収し購入者から正規の販売価格で買い戻すことで和解に合意し、この件には終止符が打たれた。
そしてリル・ナズ・Xは、この“サタンシューズ訴訟”の件をニューシングルの“プロモーション素材”としてうまく利用したようだ。
現地時間で今月19日、リル・ナズ・Xはニューシングル「Industry Baby」のティーザー動画を公開した。
「Nike v. Lil Nas X – Satan Shoes Trial」とタイトルがついたこのティーザーは、その名の通り、“サタンシューズ訴訟”をネタにしたショートクリップで、リル・ナズ・Xは、裁判長、被告人、弁護士、検察官、陪審員と、ひとりで何役も演じている。
動画の初めではサタンシューズをめぐる裁判が展開されており、証言台に立った被告人に対し、検察官は問題となっている靴を片手に尋問を始める。ところが、検察官の口から飛び出た質問は、「君のママは君がゲイだってことを知ってるのかい?」と、サタンシューズとは全く関係のない内容であった。
被告人から「知っています」という答えが返ってくると、陪審員たちはザワつく。その中の一人、リル・ナズ・Xが演じている陪審員は、「早く牢屋に入れて鍵を捨てちまえ」と囁き、裁判長もまた「モンテロ州刑務所での5年の実刑に処す」と判決を下すのだった。
これはなにも同性愛者に対し嫌悪感をむき出しにしているというわけではなく、2019年に同性愛者をカミングアウトしているリル・ナズ・Xが、LGBTQ+コミュニティーが受ける差別に対して立ち向かっていくというメッセージを込めているのだろう。
映像はその直後に切れエンドロールが続いて流れるのだが、そこでは、ニューシングルの詳細が紹介されている。リル・ナズ・Xのニューシングル「Industry Baby」はフィーチャーアーティストにジャック・ハーロウを迎えており、テイク・ア・デイトリップとカニエ・ウェストがプロデュースを担当しているという。
果たして被告人のリル・ナズ・Xは、ミュージックビデオでどのような結末を迎えることになるのか?!MVの公開が待ち遠しい。
MTV NEWS