どんな時であっても、エゼキエウは笑顔で挨拶をしてくれる。
「おはよう」「おつかれ」「ありがとう」
インタビューの最後は必ず日本語であいさつしてくれるエゼキエウ(4月20日撮影)
全て日本語だ。日常会話程度であれば日本語でも大丈夫。少しでもチームに馴染もうと真面目に言葉の習得に取り組んできた証明だ。
ブラジルでは「イナヅマ」の異名をとり、爆発的なスピードとドリブルで評価をあげた若者は、初の海外挑戦となるJリーグで苦しんでいた。昨年は2得点をあげたとはいえ破壊力は長続きせず、「イナヅマ」からは遠いプレーぶり。
自身の好調ぶりは、自信にも直結している(4月20日撮影)
だが、言葉の習得とリンクするかのようにエゼキエウはプレー面でも急成長を果たす。来日当初から続く城福監督の守備レッスンに対して真剣に耳を傾けた。
「僕は守備でも頑張るんだ」
強い意識をもって真摯にトレーニングを積み重ねたことで、彼は見違えるほど守備面が改善。その結果として、出場機会も増えた。
成長を認めた城福浩監督が試合に起用してくれることが好調につながっているというエゼキエウ(4月20日撮影)
プレー強度の高い鹿島を相手に一歩も引かず(3月13日)、横浜FC戦では積極的な守備からボールを奪い2得点に絡んだ(4月7日)。王者・川崎Fとの戦い(4月18日)でも「途中出場でもスムーズに試合に入ってくれた」と城福浩監督が高く評価するプレーぶり。
彼の生真面目さは、ボール回しのようなリラックストレーニングの時の表情にも表れる(4月20日撮影)
「ドリブルだけでなく決定的なスルーパスを出せる」(城福監督)エゼキエウの破壊力は、今や爆発寸前だ。「点をとれば、一気にブレイクしそうだね」と問いかけると「自分も期待しているよ」と若者は笑った。
「調子の波を小さくしてくれれば、エゼキエウはさらに活躍できる」と指揮官は期待する。生真面目な努力を積み重ねてきた彼の姿を見れば、その課題もきっと解決してくれるだろう。
足りないのはゴールやアシスト。具体的な数字がエゼキエウにはほしい(4月27日撮影)
「周りの期待に応えられたら、本当に幸せだ」
広島のイナヅマは、生真面目さを武器とする。
エゼキエウ・サントス・ダ・シウヴァ
1998年3月9日生まれ。ブラジル出身。フラメンゴ、フルミネンセ、ヴァスコ・ダ・ガマと並ぶリオデジャネイロのビッグクラブで、最近まで本田圭佑がプレーしていたボタフォゴの育成組織で育つ。2017年、ボタフォゴでプロデビュー。スポルチ・レシフェやクルゼイロに移籍した後、昨年から広島でプレー。温厚かつ少年っぽさを残す性格はチームメイトに愛され、特にハイネルは実の弟のように彼を可愛がる。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】