松本泰志の鋭いボールに反応したのは、水戸からやってきた若きCB住吉ジェラニレショーンだった。
狭いスペースの中でDFと駆け引き、右足首をしっかりと固定してボールをジャストミート。
強烈な弾道。ゴールか。だが愛媛FCのGK辻周吾がファインクリア。
残念。
月2日の練習試合・愛媛FC戦29分、松本泰志のCKを長沼洋一が押し込んだ時、住吉は思わず叫ぶ。このゴールで広島は勝ち越し、結果は5-4の勝利
しかし、再びCK。ニアに入ってきた松本のボールを住吉がヘッドですらし、逆サイドにいた長沼洋一が押し込んだ。その瞬間だ。
「フォーッ!!」
雄叫びとも溜息ともつかぬ住吉の声が響いた。広島移籍後2試合目となる練習試合(8月2日対愛媛FC戦)での初アシスト。元FWらしい見事な得点感覚で、チームを勝利に導いた。
声を出すことを意識したという住吉だが、その姿勢を城福浩監督も称賛。「あれだけ声が出せるのは自分の判断に自信がある証拠」と評価した(8月2日撮影)
「本当は得点をとりたかったんですけどね」と笑顔を見せる住吉からは、塩谷司・浅野雄也に続き、水戸→広島ルートからブレイクする予感が漂う。「鉄板の3バックに食い込む強い意識をもって、広島に来ました」という言葉からも、自信が見え隠れする。
考えてみれば、彼が広島にやってくるのは運命だったのかもしれない。
彼の母は、横浜で広島風お好み焼きのお店を経営し、女手一つで住吉を育ててきた。
店内飲食再開です!
— お好み焼き鉄板工房 GOU 江 (@GOU0315) February 1, 2021
クラフトビール790円の半額🍺380円セール!なくなり次第終了。17:00から20:00
(アルコールの提供は19:00迄)ソーシャルディスタンスを守りながら営業 #時短営業 #クラフトビール半額#関内 #お好み焼き #店内飲食 #広島 #カープ #スタッフ募集中 #アルバイト募集中 pic.twitter.com/zM3VJR0rnO
広島に縁もゆかりもない彼女がなぜ広島のお好み焼きを?その理由はいずれ取材したいと願っているが、とにかく母親は広島が、何よりカープが大好き。横浜からマツダスタジアムまで遠征して応援し、コロナ禍以前には20年連続してカープのキャンプを訪れたほどの熱狂ぶりだ。
広島のCB陣の高い能力は承知の上での移籍。ただ城福監督は「彼の強さは発揮できている。継続してほしい」と語り、今後の起用に前向きな評価を下している(8月2日撮影)
「サンフレッチェ広島に移籍すると伝えた時、母は声をあげて喜んでくれました。少しは恩返しできたかなと思います」
母から教わった「努力した汗は無駄にはならない」という言葉を胸に、息子は広島の地で闘う。今は真っ赤に染まった母の店内だが、いずれ紫のシャツを身に付けた愛息の写真もたくさん飾られるはずである。
住吉ジェラニレショーン(すみよし・ジェラニレショーン)
1999年10月5日生まれ。アメリカ合衆国出身。中学時代はプロ野球・筒香嘉智選手の兄が担任で、多くのことを学んだという。国士舘大時代にFWからCBにコンバート。2020年、水戸に加入。強さやスピードなど身体能力が高く評価され、1年目からポジションを獲得。2021年7月に広島移籍。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】