GKのパスミスをそのまま、ダイレクトでゴールを叩き込む。川辺駿の日本代表初得点(6月5日・対タジキスタン戦)の形を見た時、筆者の脳裏に10年前の彼のプレーがフラッシュバックした。
2011年11月27日、Jユースカップ準々決勝・札幌U-18対広島ユースが行われた。約一ヶ月後に高円宮杯プレミアリーグ決勝で再対決するユース年代屈指の能力を誇る両チームには、後にJリーグで活躍するタレントがズラリと並んでいた。
札幌が2度勝ち越し、その度に広島が粘りを見せて追いつく。戦前の予想どおり、試合は激戦となった。84分、札幌は三度勝ち越し、残り時間を考えれば、さすがに札幌の勝利かと思われた。
しかし88分、自陣ゴール前でボールをキャッチした札幌のGKがキックミス。そのGKの姿を、彼がボールを保持していた時からずっと見ていた川辺が抜け目なく反応し、ダイレクトミドルを炸裂させて同点。延長戦の末に広島が4-3で勝利を勝ち取ったその立役者は、丸刈りが初々しい16歳の少年だった。
「あの時の札幌は本当に強くて、やられっぱなしで。でも、僕らは練習から削り合って闘ってきたチームだったから」と後に川辺は広島ユースが粘り強さを発揮できる秘密を語ってくれた。
この試合で見せた勝負強さは、プロに入ってからも見せ付けている。
磐田時代の2015年8月1日対岡山戦や昨年8月の対FC東京戦、いずれも終了間際にゴールを決めてチームに勝ち点をもたらした。今年5月26日の対浦和戦でも、やはり後半アディショナルタイムに強烈な同点弾を放ち、スタジアムを熱狂させた。
「残り5分でもチャンスは複数回、つくれる。そこで自分が課題としていたミドルが決まるようになれば、次はラストパスも生きてくる」(川辺)
ここぞという時に見せる川辺駿の得点感覚は、日本代表サバイバルのための大きな武器となる。その原点となる16歳の劇的弾を思い出せた日本代表初得点だった。
川辺駿(かわべ・はやお)
1995年9月8日生まれ。広島市出身。小学校の頃にプレーした高陽FCは、先輩に森重真人(FC東京)をはじめとした多くのJリーガーを輩出した名門。その後、広島ジュニアユース・広島ユースと進み、高校3年生の時にプロ契約。昨年から広島伝統の8番を背負い、名実共にチームの中心に。6月23日(水)には広島カープ対ヤクルトスワローズの試合で始球式を行う予定。
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