「初めての勝利だから……嬉しい」
マクラクラン勉はそう言って、はにかんだ笑みをこぼした。
これまでグランドスラムで、日本人選手と組み6度ミックスダブルスに出てきたが、勝ち星には恵まれず。
今大会では柴原瑛菜と組み、念願の勝利を手にした。
コート奥の、柴原の安定のストロークとマクラクランの前衛の動きが噛み合い初戦で快勝
柴原との相性の良さを、マクラクランは「エナジー(活力)」そして「コミュニケーション」に求めた。
ニュージーランド人の父を持つマクラクランと、両親ともに日本人ながら米国カリフォルニア州に生まれ育った柴原は、ともに英語を母語とする。
試合中も、互いに声をかけて盛り上げ、ミスをしても「Good play!」「Nice try!」と前を向く姿は、たしかに「エナジー」に溢れていた。
さらに二人の共通項は、アメリカの大学リーグでプレーしてきたこと。柴原はUCLA。マクラクランはUCバークレー。いずれも文武両道の名門校だ。
アメリカの大学出身者に、ダブルスの名手は多い。
それには理由があるのだろうか……?
そう尋ねると、二人は「あると思います」と声を揃えた。
「大学リーグの団体戦は、いつもダブルスから始まる。だからダブルスが凄く大切で、チームも応援してくれるのでエナジーも湧いてくる」
マクラクランがそう言えば、「特に最近はダブルスが1セットだけになったので、1ポイント目から集中しないと勝てない。それも大きいと思います」と柴原がアシストする。
今大会は初戦で快勝し、2回戦では大接戦の末に強敵に破れたが、二人は今後とも組んでいきたいという。試合を重ねていけば、ますます活躍が期待できそうだ。
やや余談ではあるが、UCLA のスポーツチームの愛称“Bruins(ブルーイン)”は「小熊ちゃん」のような意味で、UCバークレーのそれは“Golden Bears(ゴールデンベア)”。
相性が良くないはずがない。
柴原瑛菜(しばはら・えな)
1998年2月12日米国カリフォルニア州生まれ。二人の兄と共にテニスを始め、8歳の頃にはUSTA(USテニス協会)の支援を受けるまでに頭角を現す。2016年全米Jr.ダブルス優勝。2019年夏より日本国籍の下でツアーを転戦。
マクラクラン勉(まくらくらん・べん)
1992年5月10日ニュージーランド生まれ。幼少期よりテニスのみならず空手など様々なスポーツに親しむ。大学進学を経てプロ転向。当初はニュージーランド国籍でプレーしていたが、2017年より日本国籍に。デ杯日本代表にも先出される。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】