「今までで一番調子がいい。コンディションも最高です」。すでに世界3階級を制覇しているホルヘ・リナレスは自信に満ちた表情で語る。
母国・ベネズエラでアマチュア王者となり17才で来日してから20年。今や、名門・帝拳ジムでも一番の古株だ。地道にキャリアを積み、海外でも知られるトップボクサーとなった。
今月の29日に米国で、WBCライト級王者のデビン・ヘイニーとタイトルマッチを戦う。勝てば5度目となる世界王座奪取だ。
「パワーもスピードもコンビネーションもいいね。後はガードだけ気をつける」
パンチの強さは折り紙付きな一方、これまでの敗戦は全てKOによるもの。現在はディフェンスに重きを置いてトレーニングしている。
スティックミットを持つのはリナレスの弟でトレーナーのカルロス・リナレス
ボクシングのディフェンスは主に3つに分けられる。
- 足を使ってのフットワーク
- 体でよけるボディワーク
- 腕を使ってのガード
日常生活にはない動きなので、バランスよく習得するのは難しいが、中南米独特のリズム感で、まるでダンスをしているかのように3つのディフェンスを使い分けてパンチを避けている。
今回対する王者は足を使うボクサーなので、自らがプレッシャーを掛けていくことも念頭に置いているようだ。
前に出ながら避ける動きには驚かされた。経験豊富で持ち前の運動神経がずば抜けているリナレスだからこそできる芸当だ。ディフェンスに力を入れるようになってこれらの動きを習得したという。
ガードとボディワークを駆使することで、すぐに打ち返せる体勢に繋げられる。これがベテランと呼ばれる年齢(35歳)になっても「さらに強くなった」と言われる秘密なのだろう。
「(年齢的にも)今回がラストチャンス!だからこそ頑張っている。いい右が入れば絶対倒せる」と自信を見せるリナレス。
集大成とも言える世界戦で、強さを証明してみせる。
ホルヘ・リナレス
ベネズエラバリナス州バリナス出身、35歳、帝拳ジム所属、元WBC世界フェザー級、元WBA世界スーパーフェザー級、元WBC・WBA世界ライト級王者。ニックネームは「El Niño de Oro(ゴールデンボーイ)」。
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