南アフリカ共和国でも新たな変異種の存在が……(写真:アフロ)
「昨年9月にイギリスで発見された変異種は、従来のウイルスと比べて感染リスクが1.7倍ほど高いといわれています。
さらにはロックダウンをしたのに、感染が抑制できていないという論文データも発表されています。それだけ、強い感染力を持っているのです。
その変異種が、日本国内にも広がり始めています。すでに現時点で、30以上の感染報告が出ているのです」
そう警鐘を鳴らすのは、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造教授だ。
全国的に猛威をふるう新型コロナウイルス。1月7日には、東京都での新規感染者数が2千447人を記録。1日当たりの新規感染者が2千人を超えたのは、初めてのことだった。
翌8日には、政府が東京を含めた4都県に緊急事態宣言を発出。20時以降の不要不急の外出自粛や、飲食店などへの営業時間短縮を要請する事態となった。
そんななか、新たな危機と目されているのが新型コロナウイルスの“変異種”だ。東京大学大学院理学系研究科の飯野雄一教授は、変異種による爆発的な感染拡大の可能性についてこう明かす。
「仮に従来の新型コロナウイルス感染者が300人、変異種の感染者が100人いるという状況で試算しました。
その場合、4カ月後には新規感染者が約3千人にまで増加します。しかも、ほとんどが変異種感染者という結果になったのです。さらに、半年後には約1万3千人にまで感染者が膨れ上がるという数字も出ています。
これらはあくまでシミュレーションではありますが、そもそもがかなり甘い想定のもとで算出された結果です。実際は、もっと増加のスピードが上がる可能性が高いと考えています」
飯野教授は「ここが運命の分かれ目だ」と指摘する。
「“50%致死率が上がること”と“50%感染率が上がること”を比較した場合、後者のほうが圧倒的に死亡者は増えるといわれています。変異種の感染率が1.7倍ということは、それだけ深刻な事態なのです。
それらを未然に防ぐには、自粛の程度と期間について考えなければなりません。簡単な話で、接触を50%削減するより、75%削減したほうが短期間で減少効果も得られるということです。
日本国内での変異種はまだ少ないですからね。今のうちにしっかりと抑え込めれば、1カ月でゼロにできる可能性もあります。しかし一度広がってしまったら、もう後戻りできません。
現時点で、どれだけ厳格に受け止められるか。それが、カギになってくるのです」
「女性自身」2021年2月2日号 掲載