吉村洋文知事に現場の叫びは届くのだろうか(写真:時事通信)
「これまで、うちの病院のICU(集中治療室)では心筋梗塞や脳疾患の患者さんを受け入れてきました。しかし、それも現在はすべてストップ。病床は、新型コロナウイルスに感染した重症患者さんで埋まっています。
私たち医療従事者も夜勤明けでそのまま日勤のシフトが続くこともあったりして、かなり厳しい状況です。そのため、3月末には看護師が10人以上も辞めてしまいました……」
そう打ち明けるのは、大阪府内で新型コロナウイルス重症患者の受入れ先になっている病院の看護師だ。
変異株が猛威を振るい、広がり続けている“第4波”。4月21日には大阪府での1日当たりの新規感染者が、史上最多の1千242人を記録した。また23日まで4日連続で感染者が1千人を上回っているなど、逼迫した状態が続いている。
そんななか、22日には大阪府がついに“新型コロナウイルス重症患者向けの病床使用率が100%になった”と発表した。
その結果、現場ではすでに“命の選択”ともいえる決断が下され始めたという。
■「うちに入れることはもう諦めてください」
前出の看護師は、本誌で次のように明かす。
「最近は患者さんが多すぎて、ICUとコロナ病棟は常に満床の状態です。一般病棟だったところもすべて重症病床になりましたが、それでもとても追いつきません。毎日1~2床のベッドが空いたとしても、すぐに埋まってしまう。その繰り返しなんです。
そしていよいよ、“80歳以上の患者さんは受け入れない”という決定が下されました。高齢者施設でクラスターが起こったとしても、『うちに入れることはもう諦めてください』とお断りしているんです……」
“80歳以上の患者は受入れ拒否”という非情な決断を下さなければならないほど、追い詰められている医療現場。そこには、変異株の特徴も大きく関係しているようだ。
「現在、入院患者の8割が変異株の感染者。一般病棟にいる患者さん全員が、少し前ならICU行きといわれていたレベルです。
また、これまでは新型コロナの重症患者といえば高齢者ばかりでした。しかし、最近はかなり若い患者さんも増えています。メーンとなるのはやはり40~60代ですが、20?30代でも人工呼吸器をつけるケースは少なくありません。
そして今回の変異株については、悪化するまでの“スピード”も問題です。以前は2~3日かけて少しずつ進行していくケースが多かったのですが、変異株に感染している患者さんだと数時間で急激に悪化することもあります。そのため、たとえ若い患者であっても目が離せないのです」(前出・看護師)
医療崩壊は大阪に限らず、全国でも起こりうるはず。最前線で戦う医療従事者たちの悲痛な叫びは、行政に届くのだろうか。
「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載