大阪の新型コロナウイルス感染拡大が止まらない。8月19日、大阪府での新規感染者数は187人。東京都の186人を上回り、全国最多となった。さらに特筆すべきは、重症患者の数だ。16日、大阪府の重症患者数は過去最高の72人を記録した。これは、東京都の2倍以上という異例の多さなのだ。
「7月1日時点での重症患者数は3人だけでしたが、わずか1カ月で激増しています。原因として、高齢者の感染が増えていることも指摘されています。府の発表によると、新規感染者の6割が40歳以上だったと判明。高齢者施設でのクラスターも確認されています。つまり若者だけでなく、抵抗力の弱い高齢者にも感染が拡大。結果、重症患者も増えているというわけです」(全国紙記者)
だが高齢者の感染増加は、最近だとほかの地域でも見られるという。ではなぜ大阪だけ、重症化が特に進んでいるのか。公衆衛生学に詳しい関西大学社会安全学部の高鳥毛敏雄教授はこう指摘する。
「大阪は、私たちの見えないところでの市中感染がかなり広がっていると考えられます。仮にPCR検査の実施件数が十分で、かつ感染状況をすべて正確につかめているとしましょう。そこからさらに検査数を増やしていくと、陽性率は次第に低くなっていくはずなのです。しかし今の大阪では検査数を増やしたところ、陽性率も同じく上がっています。これはPCRの検査数が足りないため、まだ全容を把握できていないと考えられるのです」
つまり大阪で重症化する人が多い背景には、そもそも認識されていない“隠れ感染者”の存在があるとも考えられるというのだ。
たしかに19日に大阪府の専門会議で発表された資料によると、重症者の感染経路の7割が「経路不明」となっている。
高鳥毛教授が指摘するように、大阪府は現状を正確につかめていないようだ。
「またPCRの検査体制が不十分で、すぐに検査を受けられないと、感染者の発見が遅れます。その間に重症化する人も出ますし、感染はさらに広がっていきます。結果として高齢者にも感染し、重症者が増えるというわけです。
第1波が落ち着いたとき、私は大阪府に『PCR検査態勢を拡充しないと大変なことになりますよ』といった要望書を出しました。しかし、吉村洋文知事は十分と考えているようです。
知事は重症患者用の病床数確保に気をとられ、その前段階である感染者を減らすことは手薄になっている気がします。これでは保健所の職員や医療関係者など、現場のスタッフは疲弊していくばかり。結果、対応が遅れてさらに感染が広がる。そんな悪循環が生まれるのではないでしょうか」
「女性自身」2020年9月8日号 掲載