5月25日に緊急事態宣言が解除されてから、3週間が経過した。
東京都では14日、新型コロナウイルスの感染者数が47人を記録。40日ぶりに40人を上回った。うち18人が歌舞伎町のホスト店などを対象とした集団検査で確認されたとして、“夜の街”での感染拡大が連日のように報じられている。
いっぽう大阪府では5月21日に3人の感染者数が出て以降、6月11日までの3週間で6人のみだった。14日に1人、16日に3人となったものの、依然として低い数字を維持している。
そんななか、声を上げるのは大阪最大の歓楽街・北新地だ。「北新地社交飲料協会」の広報担当者はこう訴える。
「東京などで感染者が出ると、『夜の街の関係者は何人』と報じられます。そのようなニュースだけ聞くと、どうしても我々のようなお店のすべてが危ないというイメージを持たれてしまいます。
でも北新地では6月1日から営業を再開していますが、みんなが府のガイドラインを守って営業しています。中にはそれ以上の厳しい独自ガイドラインを定めているお店もあるくらいです」
なぜ大阪では、東京のような“夜の街”での感染が広がっていないのか。そこには北新地のホステルたちの徹底したプロ意識があるという。
「北新地社交飲料協会」の広報担当者は、感染防止対策についてこう続ける。
「まず前提として、北新地ではほとんどのお店が休業要請にきちんと従ってきました。6月1日に解除される日まで、店を閉めていましたからね。また要請が解除されてからも、徹底した感染防止対策を取っています。
大阪府は接待を伴う飲食店向けに対して『テーブルの間を透明なパーティションで区切るか、距離を最低1メートル空けること』『横並びで座れるよう席の配置を工夫し、横並びが難しい場合は真正面を避けるか、テーブルの上にアクリル板などを設置すること』『接客の際に身体的な接触を避けること』『客どうしのお酌やグラスなどの回し飲みは避けるよう注意喚起すること』『大声の会話が行われないようBGMや効果音などを、最小限に調整すること』などのガイドラインを出しています。
それに対して北新地では府のガイドラインはもちろんのこと、店によっては入室前の体温測定や消毒を徹底するようにしています。ホステスさんがフェイスシールドをして接客する店もあると聞きました」
新型コロナウイルスは、北新地の高級クラブを激変させてしまったようだ。さらに「ここまでやるのか」と驚くほどの店もあるという。
「複数の大型店を経営する大手さんでは『テーブル間隔を1mあける』という府のガイドラインの5倍厳しい基準を守っているそうです。テーブルを店の四隅と真ん中の5つに限定することで、間隔を5mあけていると聞きました。
テーブルが5つしかないので、同時に入店できるお客さんは5組限定。さらに“密”をさせるため、お客さんは1テーブルあたりで最大4名まで。しかも滞在時間を1日1セット90分にしており、3セットで閉店です。
90分ごとにお客さんを総入れ替えし、その間の15分で店内をスタッフ総掛かりで完全消毒。さらに換気も普通の換気扇ではなく、工事現場で使うような大型送風機を持ち込んで行っているそうです。
ホステスさんも1つのテーブルについたら、そのお客さんがかえるまで固定。もちろん、テーブルの移動はしません。つまり『どのホステスが』『どの時間帯に』『どのテーブルで』『どのお客さんと接客したのか』が、後からすぐにわかるようになっています。これぐらい徹底してやっているお店もあるんです」
そうした努力もあり、現時点でクラスター発生などの報告はないという。なぜ北新地は団結できているのか。記者が聞くと、こんな答えが返ってきた。
「ひとえに『北新地ブランドを守らないといけない』という信念からだと思います。我々の先輩方が何年も積み重ねて築き上げてきた『最高のサービスとおもてなしが受けられる場所』という北新地のイメージを、自分たちが傷つけるわけにはいかない。そんな思いが経営者やホステスさんらに共通してあるから、徹底した対策を取っているのだと思います。
ただでさえ、新型コロナウイルスの影響は深刻です。北新地でも何軒かのお店は閉めることになったと聞いています。緊急事態宣言が解除さえた後も、お客さんの戻りは3割ほどです。でも老舗や大規模店で腰を据えてやってきたホステスさんは、ほとんどがお店に残っていると聞いています。そして『北新地から絶対に感染者を出さない』という思いで、仕事を続けています」