「100名様に、マックブックをプレゼントします!」
動画の中で、そう快活に宣言したのは、「マコなり社長」こと、真子就有(まこゆきなり)氏だ。ビジネススクールを運営する株式会社divの代表取締役を務めるかたわら、経営者YouTuberとしても活躍中。その登録者数は約100万人を誇る。
冒頭のセリフは7月10日、自身のチャンネルで公開された動画で発せられた言葉。経営する会社の好調ぶりと、自らの資産の多さを示すかのように、合計約1200万円のプレゼント企画を突如ぶち上げた。
彼が笑みを浮かべて、大それた企画を発表したちょうどそのころ、「マコなり社長」の実態を告白する声が、本誌に届いた。
「divの経営は、じつはもうボロボロなんです。いつ倒産するのかと、従業員みんながヒヤヒヤしていますよ」
こう証言するのは、divを先日退職した元従業員のAさん。Aさんが、会社の実態を明かす。
「会社の経営を最初に心配したのは、2020年8月に休業者を出したときでした。コロナで仕事が激減し、一部の社員に、給料を3割カットして自宅待機させたのです。
8月以降も100人前後の休業者を出し続け、3月時点では135人にまで上っています。なかには、入社して2週間で休職になり、そのままリストラになった人も。昨年から、会社は全然機能していませんでした」
今年の3月には、ついに希望退職者の募集が始まった。
「すでにネットでも出ていることですが、3月に一度希望退職者を募っています。結果的に応じた人数は100人程度。そのころの社員数は合計で600人程度なので、これだけでも相当な人員整理です」
たしかにネットでは、divの希望退職者の募集はすでに話題になっている。しかし、人員整理はこれだけでは終わらなかった。
「4月下旬からは退職勧奨がおこなわれました。3月の退職者募集では数がなかなか集まらなかったためです。
それでも退職希望者は増えず、ついに6月2日の午後、社内の月次総会で発表されたのが、130人ほどのリストラでした。該当者には解雇予告通知書が送られ、30日後の解雇を言い渡されるという流れです。私も、今年の3月に休職し、結局6月の整理解雇の対象となりました。
希望退職者とリストラされた人を合わせると250名もの人が会社から出て行くことになりました。そのほかにも、会社を見限って出て行った人も含めると、私の知っている限りでは最終的に300名近くが会社をさることになっています。
当然社内は騒然となりました。 4月から約半年で、社員が半減してしまうのですから」
解雇予告通知書について、『それ、パワハラです 何がアウトで、何がセーフか』などの著書があり、労働問題に詳しい笹山尚人弁護士は、「手続きとしては正当です。ただし解雇したこと自体には疑問も残ります」という。
「解雇する際には、経営者側がその旨を30日以上前に予告しなければならないと労働基準法で決められています。今回の場合は、30日後の解雇を言い渡しているため、手続きとしては正当です。
ただし、解雇の手続きとして正当であっても、解雇自体の理由が違法であるということもあり得ます。
整理解雇は、会社としてできる限りの措置をとった上でおこなう最後の手段。合理性のない解雇は許されないと労働契約法で定められていますが、今回の場合は、社長自らが高額なプレゼント企画を立ち上げるなど、経営者として解雇を回避するために十分な措置をとったのかどうか、解雇の合理性に疑問が残ります」
本誌は、社長が整理解雇を宣言した6月の月次総会の様子をとらえた動画を入手した。その際に、マコなり社長から発せられたセリフは次のようなものだ。
「人間の本質が出るところ、その人の器が出るタイミングというのは、いちばんピンチのとき。いちばん苦しいとき、自分のことで頭がいっぱいになるとき、誰かのせいにしたくなるとき、経営陣のせいにしたくなるとき、もしくはもうコロナのせいにしたくなるとき。
(だが、重要なのは)誰のせいにもせず、すべて自分の責任だと。ここからどう生きるかだと。それを考えられるかどうかだと。そして、この会社に対して、自分が一度決めた決断に誇りを持てるかどうかだと」
マコなり社長は涼しげな表情で、「解雇にされたことを自分の責任として受け止めろ」と暗に宣言したのだ。
これだけの社員をリストラしたということは、やはり会社の業績は芳しくないのだろうか。Aさんが語る。
「相当ひどい状況です。6月の月次総会では『過去、最も危機的な状況』と役員自らがプレゼンで話しています。特に今年2月からは集客数がガクンと落ちていることが、毎月報告されていました。
運営しているビジネススクールは、もともと13教室あったものが、3月末で5教室、7月に3教室を閉鎖することになっています。この半年で激減しているのです。明らかにコロナの影響で経営状態は苦しくなっています」
それでもマコなり社長は、YouTuberとしての活動をやめるどころか、業績不振の様子など少しも見せず、動画を次々と公開し続けている。はたして、この人員整理についてどのように考えているのだろうか。
本誌はdivに対し、電話で質問をしたが、「社内で確認いたします」と告げられたのち、期日までの回答はなかった。
ちなみに、先ほどあげた6月の月次総会の翌日に公開した動画で、マコなり社長はこう語っている。
「人生は、誰しも今が一番若い。もし『若いときにもっとこうしておけばよかった』と思うのであれば、今この瞬間から全力で取り組むべきなんです」
業績回復に向けて、「今この瞬間から全力で取り組」んで欲しい。
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