写真は、カナダ出身の落語家・桂三輝さん。
落語は万国共通
―― 日本の大学院で落語を研究したそうですが、授業の日本語は難易度が高いですよね。日本語がとてもお上手ですが、どうやって習得したんですか。
三輝 大学院以上に、修行が言葉に厳しかったです。師匠がすごく敬語に厳しかったから。「ちゃんとしゃべれるようになるまで黙っとけ」って言われて。半年ぐらい、ほぼ何も言わなかったですね。
―― 落語の海外公演で、日本と海外の笑いのツボが違うと感じたことはありますか。
三輝 笑いのツボの違いは、もちろんいろいろあります。ただ、落語は万国共通。たとえば長屋の形がわからなくても、家の壁が薄いから隣の夫婦喧嘩が聴こえるっていうのは、世界中誰でもわかる面白味じゃないですか。
修行は本気の印
―― 昨年ブロードウェイでのロングラン公演がスタートしましたが、現地の反応はどうでしたか。
三輝 おかげさまでニューヨーク・タイムズ、ロイター通信など多くのメディアに取り上げられました。「三輝は早口過ぎる」ってダメ出しもあったけど、「落語はすごく面白い」「新鮮」「ぜひみなさん見てください」などと書かれていました。
写真は、BOOKウォッチ編集部のリモートインタビューに応える桂三輝さん。
笑い合えたら、世界が絶対よくなる
―― 中国語落語にも挑戦されているとか。
三輝 中国語は難しいです。私は中国語の先生から教わるんじゃなく、クラウドファンディングと同じ考え方でクラウドラーニングしています。Googleで翻訳して、正しい発音かどうかわからないけど、とりあえずインターネットにアップする。それを見た中国の方が、コメントですごく親切に直してくれるんです。それで私はもっといい台本を作って、ちゃんとした発音を覚えて、またアップする。世界中の中国人が、私の先生になってくれています。
―― 日本人の感覚だと「間違っていたら恥ずかしい」と、喋れなくなりそうです。
三輝 笑ってもらえるのが一番だから、私は全然気にしないけど(笑)恥ずかしいと思って喋れないのは非常にもったいないと思います。もし笑われたとしても、全然恥ずかしくない。コミュニケーションさえとれたら大丈夫だし、うまくなる。お互いにもっと笑い合えたら、世界が絶対よくなると思うから。
最初だけギュッと我慢して
―― これから英語を物にしたいと思っている読者に応援メッセージをお願いします。
三輝 どの言語も学び始めると、最初の山が大変。でも、覚えるのが大変なのは最初だけ。だんだん喋れるようになってくると、びっくりするほどいつの間にか一気に喋れるようになる。だから最初はちょっと我慢が必要。でも思っているほど難しくないから。ステップバイステップが必要だと思います。
―― 異国の伝統芸能を学び、磨き、世界を舞台に発信している桂三輝さん。エネルギーに満ち溢れていた。最後に話してくれた言語を学ぶプロセスは、日本語を駆使する三輝さんの言葉だけに説得力がある。英語は学校の授業で数年間学んだけど、結局何も身についていない......。勉強したいけど、英語の学習教材はありすぎて何がいいのかわからない......。そうやって迷っている人は、三輝さんの「英語落語」を聴いて、まずは英語を楽しむところから始めることをおすすめしたい。
写真は、本書『桂三輝の英語落語』(アルク)の表紙。
■桂三輝さんプロフィール
(BOOKウォッチ編集部 Yukako)
書名: 桂三輝の英語落語
監修・編集・著者名: 桂 三輝 演者、松岡 昇 表現解説
出版社名: 株式会社アルク
出版年月日: 2020年3月16日
定価: 本体1500円+税
判型・ページ数: A5判・152ページ
ISBN: 9784757436077
備考: 音声ダウンロード付き