はじめまして、tvkアナウンサーの吉井祥博です。ベイスターズの戦いを取材し実況する日々の中で放送席ではお伝えしきれなかった出来事やエピソードを、根岸佑輔アナウンサーと共にコラムでお伝えします。よろしくお願いいたします。
交流戦でファンの熱い思いを呼び起こす戦いを見せてくれたベイスターズ。とりわけ、前年まで交流戦勝率が6割2分9厘と12球団トップのソフトバンク戦は苦戦が予想されましたが、2勝1分けと勝ち越し。牧選手や大和選手の決勝打には実況をしながら歓喜の涙がにじみ出そうでした。
そのソフトバンクとの3連戦初戦があった6月1日、tvkの放送席に初めて解説としてお招きしたのが斎藤隆さん=写真右=です。1992年から13年間ベイスターズ投手陣を支え、98年には13勝を挙げてリーグ制覇、日本一に貢献。2006年からはメジャーリーグ5球団を渡り歩き、NPB復帰の13年に楽天でも日本一を経験しました。
斎藤さんとじっくりお話しする機会はおよそ15年ぶり。今、ベイスターズへどんな思いを抱いているのか気になりましたが、横浜スタジアムに戻ってきた斎藤さんの笑顔は変わらず、どこまでも明るく爽やかでした。
「1998年のマシンガン打線で、自分が一番手強い打者と思ったのは鈴木尚典さん」「2001年に抑え投手になってくれと言われた時は、佐々木さんのイメージが強かったので罰ゲームのように感じ悩みました」「楽天で日本一になった時は震災が関わり、特別な思いでした。でも1998年のベイスターズでの日本一、ファンの熱い思いは格別でした。自分の野球人生は幸せだと思います」
現役時代と同様に的確で分かりやすく、飾らない言葉で語ってくれました。
渡米前、けがもあって調子が上がらず、思うように活躍できなかった時期については「抑えからまた先発に戻った時、なかなか感覚が戻らなかった」と言います。その言葉に、私は「当時苦しんでいる斎藤さんに遠慮をしていたが、もっとたくさん話を聞けばよかった」と反省しました。
さて試合は8回に牧選手の逆転タイムリー二塁打が飛び出し、4─3でベイスターズが快勝。斎藤さんは牧選手が本塁打の手応えを感じ、打った後バットを持ったまま走る姿を放送中にまねをしてほほ笑んでいました。
チームメートだった三浦監督についても、こうエールを送ってくれています。「静かだけど、負けたくない気持ちは誰よりも強い。時間はかかるかもしれないけど、目指す野球は必ず実を結ぶ。それが三浦大輔という人です」
私の力不足から、かつて取材で十分に思いを引き出せなかった人と再びめぐり逢い、一緒に発信できる機会は、実況中継という仕事がもたらしてくれる幸運です。
=随時掲載
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