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「聞いていないのかな」
「心に響いていないんじゃないかと思うときがあります。いまは私たちがマスクを着けていて顔の半分が隠れているからかもしれません。保育士は、エネルギッシュな子どもたちをまとめて、引き付ける技を持っています。マスクを着けていると、その力も半減します」(園長)
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■乳児期が基礎になる
『乳児期の親と子の絆をめぐって』の著書がある、しぶいこどもクリニック(東京都大田区)の渋井展子(ひろこ)院長(昭和大学医学部小児科客員教授)は、乳児の発達には「周囲との交流が欠かせない」と解説する。
「新生児の脳は、生命維持に必要な呼吸や心拍、食欲を司る脳幹と不安を察知する扁桃体(へんとうたい)だけが完成された状態で生まれてきます。それ以外の脳の発達は、お世話をする人と環境により作られます」
「子どもの人格の基礎を形成する重要な時期です。建築に例えれば、やり直しがきかない基礎工事に当たります」(渋井院長)
「5歳までに、特定の養育者との間にうまく信頼関係を築けないままだと、『愛着障害』になることがあります。自分の感情の調節が難しくなり、表情を読み取る能力が低くなって、喜びや恐怖といった感情への反応も薄くなる。心のよりどころとなる存在がないため、ストレスに耐える力が身につかない可能性があります」(同)
「赤ちゃんは、大人の目だけ見ても、笑っているのか怒っているのか、わかりません。この状況が数年続けば、表情を見て感情を認知する能力への影響があるかもしれません。また、口の動きを見ながら言葉を覚えていきますが、いまはそれも難しくなっています」(同)
(ライター・井上有紀子)
※AERA 2020年10月5日号より抜粋