ある人は、コロナ禍の就活を「リーマン・ショックの再来」ともいった。だが、ふたを開けてみると、就職内定率は月を重ねるごとに緩やかに増加し、リクルートキャリアの調査では、10月1日時点での就職内定率は88.7%に。だが、ある大学職員はその数字に「実感がない」とこぼす。AERA 2020年10月26日号、「採用したい大学」特集から。
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リクルートキャリアが調査した10月1日時点での就職内定率は88.7%。この数値に実感が伴わないという声もある。
ある大学職員が打ち明ける。
「大学が実施した進路調査を卒業予定者数ベースで見た場合、9月時点での進路決定率は5割弱。低い学部では3割というところもある。世間で言われている数字に実感はありません」
もちろん、複数内定を保持していたり、調査票を提出していない学生も含まれるため、進路決定率と内定率は異なるが、数字を見るうえで意識したほうがいいだろう。
■東大生の就活に「強み」
リーマン・ショック時には、相次ぐ内定取り消しが社会問題となった。こうした過去の教訓から、今の学生たちが気にするのは、企業の体力だ。
「この会社の経営状況は大丈夫か」「大手であれば安心できるのか」。3月以降、東京大のキャリアサポート室にはこんな質問をする学生が増えた。同室特任専門職員の上戸麻依子さんは言う。
「業界に限らず、コロナが経済にどう影響するのか、漠然とした不安があったようです」
歴史ある商社や鉄鋼、自動車などだけでなく、ヤフーや楽天、NTTデータなどネット系企業にも強みを増している東大。大学の入構制限で研究が滞り、就活との両立がどうなることかと思いきや、ふたを開けてみれば、志望傾向や内定状況は昨年と変わらなかったという。
本部学生相談支援課の佐々木博課長は、こう話す。
「研究力に裏打ちされた教育という東大ならではの強みが、就活へのコロナの影響を最低限に抑えられたのだと見ています」
約7年前、学部教育の改革でトライリンガル人材の育成や意欲的な学生を集めた教育プログラムを導入。他にも、有志の学生が卒業生と交流する場をつくるなど、キャリアに主体的に取り組む学生も多いという。
先行き不透明な新型コロナの影響で21年卒の就活が危惧されるが、実際は22年卒のほうが影響する可能性が高いと指摘するのは、マイナビのHRリサーチ部の東郷こずえさんだ。
「急なオンライン対応を強いられた今年と違い、22年卒以降はウェブと対面の両方を使いこなすことが前提となります。今年のように『対応できていなくても仕方ないよね』と思ってはもらえません」
■22年卒の就活は未知数
オンライン就活元年ともなった今年は、いわば企業も学生も下駄をはいていた状態。22年卒からは通用しなくなる。
さらに気がかりなのは、今夏オンラインでしか企業と接点を持てなかったインターン生たちだ。東郷さんは言う。
「インターンシップ期間中に企業と直接接点を持てた21年卒と違って、当初からコロナ禍にある22年卒はあらゆるフェーズでオンラインとの併用が前提になると考えられます。それがどう影響するのかが未知数で、就活のときだけでなく入社後も注意が必要です」
売り手市場から一転するこれからの就活では、学生も企業も大学も「新しい距離感」が求められている。
(編集部・福井しほ)
※AERA 2020年10月26日号「人気102社の採用したい大学」特集から抜粋
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