自陣の深い位置から相手のゴール前まで一気に駆け上がったかと思えば、すぐさま戻って守備の仕事をこなす。真夏のピッチを何度上下動しても、疲れた素振りを見せることはほとんどない。
今季、J2の大宮アルディージャから完全移籍で加入した1年目の馬渡和彰は途中出場が多いものの、エネルギッシュな仕事ぶりを見せている。
疲れ知らずのタフネスは、酷暑でも精力的に動ける理由を冗談交じりに教えてくれた。
「にんにくパワーかもしれないですね」
馬渡の夏を乗り切る“勝負飯”は、家族みんなでつくる餃子。近所のスーパーで餃子の皮から仕入れ、ふたりの息子と一緒にせっせと具材を詰める。微笑ましい親子の共同作業である。ポイントはにんにくの量だという。
「“増し増し”にしています。うちは8歳の長男もにんにくが大好きなんですよ。焼肉屋に連れて行っても、にんにくのオイル焼きを頼むくらいなので」
家族団らんの餃子パーティーを始めたきっかけは、31歳を迎えた6月23日の誕生日だった。妻からディナーの相談をされ、考えを巡らせた。
特別な雰囲気を味わうレストランという選択肢もあったものの、馬渡が選んだのは自宅での晩餐。
「時間を気にせずにゆっくり過ごすのもいいかなって。家族全員が餃子好きだったこともあり、これだと思いました」
いまでは、つかの間のオフの前には、家族のお楽しみになっている。大きなホットプレートに所狭しと手作り餃子を並べ、次から次に焼いていく。
その量はとめどなくなることもある。その日に食べきれない分は冷凍して、翌日以降に食べている。妻とふたりで向かい合い、餃子をつまみにビールで喉を潤すのは至福のときだ。
「夏はこれが最高です」
馬渡家は、大人だけが楽しむのではない。8歳と4歳の兄弟だって、一杯飲みたい日はある。普段は炭酸飲料を控えさせているが、パーティーの日だけは特別に許可している。
「家族にとってのご褒美タイムなので。餃子が並ぶ日は自由な時間が流れていますね」
幸せなファミリーと過ごす時間を振り返るときは、自然と口元も緩む。こだわりの人工芝を敷き詰めた自慢の庭でバーベキューを楽しみ、息子たちとサッカーボールを一緒に蹴ることもある。
マイホームパパは家庭で英気を養い、真夏の連戦でも走り続けることを誓っていた。
(取材・文/杉園昌之)
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