今シーズンの3点目は、鮮やかな左足ボレーで決めた。
リーグ再開初戦となった8月9日の北海道コンサドーレ札幌戦。2点を追う66分、浦和レッズの明本考浩は左サイドハーフの位置からすっと中央寄りにポジションを取り、関根貴大からクロスボールが入ってくることを予測。
ターゲットとなる岩波拓也がファーサイドにいることも確認済みだった。目の前にボールを落としてもらうつもりで待っていたのだ。
「あのときは、ゴールしか見えていなかったです。足にボールを当てることを意識し、迷わずに振り抜きました」
黒星こそ喫したものの、一矢報いる一発となった。
ただ、目を引いたのはゴールだけではない。明本は左サイドハーフで先発出場すると、しっかり役割をこなしていた。
後半は前から果敢にプレスをかけ、守備に切り替わった瞬間に猛スピードで帰陣。後半途中からは左サイドバックにポジションを移し、スキあらば前方のスペースへ駆け上がった。
最後の最後まで無尽蔵とも思えるスタミナを惜しみなく使い、フル稼働する。スプリントの回数はチーム最多の「20」。ほとんどの試合で20回は超えており、15番の走力が目立たない試合はないと言ってもいいくらいだ。
真夏になっても、足が重くなることはない。パワーの源は気持ちだという。
「(走って)汗をかかないと、僕がいる意味はないので。毎試合、その持ち味を出していきたいと思っています」
シーズン序盤は右サイドハーフからトップ下でプレー。そして、左サイドハーフに場所を変えたかと思えば、左サイドバックでも安定して働いている。
チーム事情と試合状況に応じて、どのポジションでも一定以上のパフォーマンスを発揮。入団会見で話していた言葉を覚えている人も多いはずだ。
「決められたポジションで、その場でしっかりとプレーするのが僕の特長」
明本のポリバレントな能力は底知れない。
国士舘大時代はボックス・トゥ・ボックスを体現するボランチとして、Jクラブのスカウトから高い評価を受けていた。
いまだに一部のプロ関係者は「本来の持ち味はボランチで出ると思う」と語る人もいる。
シーズン終盤に向けて、まだまだ進化していくはず。野心家を自認する23歳の成長からは目が離せない。
(取材/文・杉園昌之)
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