三寒四温を繰り返し、春に近づく今日この頃。ホワイトデーの浦和は朝から肌寒かった。
午前10時過ぎ、クラブハウスからグラウンドに出てきたほとんどの選手たちはロングスパッツを履き込んでいた。
マチェイ スコルジャ監督をはじめ、チームスタッフは長ズボンのトレーニングウェア姿。それでも、ただひとりだけ元気なふくらはぎをのぞかせている。春夏秋冬、雨の日も風の日もスタイルは一貫して変わらない。
北欧育ちのダヴィド モーベルグ、アレクサンダー ショルツらが寒そうにする1月の真冬でもハーフパンツを履き続けていた。
浦和レッズの羽生直行通訳に長年、気になっていた疑問をぶつけてみた。
――なぜ、凍えるような日も長ズボンを履かないのですか?
「特別なこだわりはありません。確かに周りからは『寒くないの?』とよく聞かれますが、僕は少しひんやりする程度なんです。冬でも上を少し着込めば、下は大丈夫。だったら、楽なハーフパンツのほうがいいかなって。生地が足にまとまわりつく感じが嫌なので。1年通し、長ズボンのジャージを履くのは、写真撮影のときくらいです」
保温効果のある特別なオイルを塗っているわけでもない。いつも自然に身を任せている。
寒波が押し寄せた極寒のある日、日本代表時代からの仲であるキャプテンの酒井宏樹から「さすがに今日は我慢しているでしょ?」と突っ込まれたが、普段どおり柔和な笑みを浮かべて言葉を返した。
「本当に平気だから」
決して無理はしていない。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の通訳を務めているときもそうだった。2018年3月、ヨーロッパ遠征の練習で防寒対策していた周囲に驚かれたことを覚えている。
「あの日はヒョウまで降り出しましたので」
言うまでもなく、冷え込みの激しかったベルギーの夜もハーフパンツの羽生さんがそこにいた。
日本にかぎらず、世界のどこへ出向いても変わらない。仕事が終わって、プライベートの時間を過ごすときも、ズボンの丈は同じ。ヒザから下で風を感じている。
「僕の場合、今日は大丈夫だなと思った日にハーフパンツを選んでいるだけです。寒くて耐えられないと思った日にはさすがに長ズボンを履きますよ」
羽生通訳がオフィシャルの撮影日以外にロングパンツを着用したのは、日本でサッカーの通訳を始めた1996年の清水エスパルス時代まで遡らないといけない。
仕事に慣れない頃に少し履いた程度だという。約27年間は「大丈夫の日」が続いている。今年で48歳を迎えるが、鉄人の記録はまだまだ伸びていきそうだ。
(取材・文/杉園昌之)
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