子どもの頃から浦和レッズが好きで、熱心なサポーターを自認する堀内陽太にとって、11月4日に行われたYBCルヴァンカップはふたつの意味で耐え難いゲームだった。
ひとつは愛するレッズが敗れたこと。
もうひとつは決勝の舞台に立てず、チームを助けられなかったこと。
だからこそ、ふつふつと湧き上がる思いがあった。
「あの雰囲気のなかでプレーして、自分の力でレッズを勝たせたい。その思いが強まりました。来年の決勝こそは必ずって」
試合後、先発出場してハーフタイムにベンチに下がった1歳下の早川隼平に「どうだった?」と声をかけた。
「練習していた形があったんですけど、隼平は『その連係がうまくいかなくて、どう動けばいいか迷ってしまった』と悔しがっていましたね。自分のプレーに納得できないというようなことも話していました」
堀内にとって早川は後輩というより、浦和レッズユースで切磋琢磨してきた同士であり、ライバルであるという感覚だ。おそらく早川も同じように感じているはずで、ふたりは「ジュンペイ」「ヨウタ」と呼び合い、寮でも一緒に過ごしている。
ボランチを主戦場とする堀内に対して、早川は2列目が本職とポジションは異なるが、このルヴァンカップにおいては、まさにライバルの関係だった。
ルヴァンカップには、21歳以下の選手を先発起用しなければならないというレギュレーションがある。レッズに所属する21歳以下の選手は、夏に鈴木彩艶が海外に旅立って以降、堀内と早川のふたりだけ。ガンバ大阪との準々決勝の2試合、横浜F・マリノスとの準決勝の第1戦では早川は先発出場した。
ところが、横浜FMとの第1戦の前半に早川が負傷し、4日後の第2戦の出場に“黄色信号”が灯る。堀内が先発出場のチャンスを手にする可能性が高まった。
先輩たちから「ついに来たな」と声をかけられ、「陽太なら大丈夫」と勇気づけられもした。堀内自身も武者震いに似た心地よい緊張感のなかで、第2戦に向けて準備を進めた。
ところが――。
「あの週は今シーズンで一番っていうくらい調子が良くて。やれるぞ、っていう自信もあったんです。でも、結局、ケガで万全ではない隼平が選ばれた。小学生の頃からサッカーをやってきて、一番悔しかったというか。自分の実力不足を痛感しました」
今のところ今季の公式戦出場は、4月6日のルヴァンカップ・川崎フロンターレ戦の4分間にとどまっている。
「難しい時間が長いですけど、自分はいつチャンスが来てもいいようにずっと準備をしていますし、出たらチームを勝利に導けるように、って思っています」
現在は負傷者が続出しており、チームの台所事情は苦しい。しかし、J1リーグのみならず、AFCチャンピオンズリーグ2023/24、FIFAクラブワールドカップと、公式戦はまだまだ続く。ピッチに立って浦和レッズを勝利に導くという目標を胸に、堀内陽太は今シーズンを戦い抜く。
(取材・文/飯尾篤史)
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