Yogibo WEリーグ2年目のシーズンが開幕した。三菱重工浦和レッズレディースは開幕戦でAC長野パルセイロ・レディースに3-2で勝利し、好スタートを切った。その開幕戦でセンターバックとして先発出場したのが、今年1月にJFAアカデミー福島から加入した2年目の石川璃音だ。準優勝で終えた8月のFIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022ではU-20日本女子代表として6試合すべてに先発出場。世界の同年代たちと対戦して感じた課題や今季に懸ける思いなど、飛躍が期待される石川の現在地に迫る。
■失点直後、「あー‼」と叫んだ
——WEリーグ開幕戦はAC長野に3-2で勝利しました。自身にとってリーグデビュー戦を終えた感想を聞かせてください。
「リーグ開幕戦だったので、試合に勝利できたのはチームが勢いに乗るためにもよかったと思っています。その一方で2失点した結果は、守ることが仕事のDFとしては役割を果たせなかったと感じています。失点シーンを見ても、決して相手に崩されたわけではなく、自分たちのミスから喫した失点でした。特に(16分の失点は)自分のミスが原因だったので、許されないことだったと反省しています」
——石川選手にとっては加入2年目で、リーグ開幕戦に先発出場。そうしたプレッシャーを考えると、自らのミスが失点につながってしまうと、その後のプレーに影響が出ても決しておかしくはなかったと思います。
「確かにそうですね」
——でも、失点直後のプレーを見ると、狭いコースに縦パスをつけるなど、ミスを恐れているようには見えませんでした。
「実は失点直後にチームメートのみんなで集まったときに、先輩たちが励ましてくれたんです。特に(安藤)梢さんは『一度、思いっきり吠えてみる?』と言ってくれたんです。そう言われて、一度、『あー‼』って大きな声を出して叫んでみたら、気持ちを切り替えることができました」
——そうしたアドバイスと行動が、その後の積極的なプレーにつながっていたんですね。
「他の選手たちも『大丈夫だよ』『切り替えよう』という言葉を掛けてくれたのと、梢さんのアドバイスのおかげで気持ちを建て直すことができました。それによって、自分自身もミスはもう取り返すことはできないので、何か自分にできることをやろうと思い直すことができました」
——センターバックとしては、どのようなところを意識してプレーしていたのでしょうか?
「自分がボールを持っているときに、相手に奪われてしまうと失点に直結してしまうポジションなので、確実に味方に繋ぐことを意識していました。相手が前からプレッシャーに来るなかで、その意識が強くなってしまい、近くの選手にパスを出そうとしてしまったのは課題だと感じています。相手が前からハメにきたときには、相手の背後を狙ったパスも出せるようにならなければと思っています。特にチームの攻撃はセンターバックから始まるので」
——センターバックから攻撃がはじまると言ってくれたように、攻撃を組み立てていく役割を担っているように思います。そこはどのような狙いを持ってプレーしていますか?
「少ないタッチ数でパスをつないでいくことで、相手もプレッシャーを掛けにくくなるので、パスが来る前に周りを見て、次の選択肢を見つけておくことは意識しています。でも、そこも開幕戦を戦って、まだまだだなと思っています。
——1試合を戦っただけでも、しっかりと課題が整理されていますね。
「あとは、FWにつけるくさびのパスも、通ったとしてもバウンドしてしまうなど、パスの受け手が処理に困るようなボールを出してしまったことも課題でした。先輩たちの技術が高いので、何とか処理してくれていますが、もっと思いやりのあるキックを蹴れるようにならなければと感じています」
——開幕戦を戦って、改めて感じているプレーの強みや特徴はどこですか?
「これまでプレーの長所を聞かれると、1対1の守備と答えていたんです。でも、レッズレディースに加入してから、(猶本)光さんと1対1をしたときに、全然、止めることができなくて(苦笑)。それからは、1対1の守備を自分の特徴として挙げていいのかどうか分からなくなりました(笑)。それくらい光さんはうまくて、止められないんです!
——コンビを組んでいる高橋はな選手とはどのような関係性を築いていますか?
「はなさんとは常に声を掛け合いながらプレーできています。あとは、私たちはふたりともコーナーキックに合わせることを得意にしているので、味方がコーナーキックを獲得してくれたときにはふたりで『ここは行こう! 行こう!』と盛り上がっています(笑)。はなさんと一緒にプレーできるのは心強いですし、自分自身もコーナーキックでは得点を狙っていきたいと思います」
■自分がいれば大丈夫という存在に
——8月にはU-20日本女子代表としてU-20女子ワールドカップに臨みました。決勝でスペインに1-3で敗れ、惜しくも準優勝に終わりましたが、あの大会はどのような財産として残っていますか?
「正直、ワールドカップでは自分の良さがまったく出せなかったという思いがあります。3バックのセンターを務めていたのですが、両脇のふたりがかなり攻守に関わる場面が多かったので、自分としては何も仕事ができなかったという思いしか残っていません。
——世界の選手たちと対戦して感じたことがあれば教えてください。
「日本の選手たちは足もとの技術が高く、ボールを繋ぐことができると言われていますが、あのレベルになると、相手は全員が同じようにプレーできる技術があると感じました。それにプラスして、フィジカルも強い。そう考えると、日本人である私たちがフィジカルで対抗するのは難しいかもしれませんが、上回れなくても同じレベルにはならなければいけないなと思っています」
——そこを意識しながら、WEリーグを戦っていく必要があるということでしょうか?
「まずは大会を通して6試合を戦ったことで、連戦を戦い抜くタフさや体力が大事だと感じたので、光さんにアドバイスを受けて週1回は有酸素トレーニングに取り組むようになりました。
——今シーズンの目標を教えてください。
「チームとしては、昨季リーグ2位だったので、それを上回るためにも優勝を目指すことは絶対だと思っています。チームには得点が取れる選手がたくさんいる一方、リーグ戦は得失点差も大切になるので、守備陣である自分が失点を減らすことに貢献していかなければと思っています。
——次節はリーグカップ決勝でも対戦した日テレ・東京ヴェルディベレーザになります。
「カップ戦の決勝で対戦したときはミスも多かったので、まずはミスを減らすこと。そして、自分たちから仕掛けてボールを動かすことができれば、と思っています。個人的には中学1年生のときから知っていて、代表の活動でも一緒に過ごすことの多い藤野あおば選手がいるので、彼女には絶対にやらせたくないと思っています」
(取材・文/原田大輔)