多彩なバリエーションから公式戦3試合連続ゴール。浦和レッズの松尾佑介にストライカーの風格が出てきた。
8月3日、YBCルヴァンカッププライムステージ準々決勝・第1戦の名古屋グランパス戦では、鮮やかなワンタッチゴールをマーク。ダヴィド モーベルグからの鋭いクロスをピンポイントで合わせ、右足のつま先でゴールへ流し込んだ。駆け引き、動き出し、シュート技術、そのすべてが一流の点取り屋然としていた。
夏を迎え、殻をひとつ破ったような仕事ぶりを見せている。
7月16日の清水エスパルス戦はGKが弾いた球に素早く反応してゴールに詰め、7月30日の川崎フロンターレ戦では目の前にこぼれてきたボールを右足でコースを突いてネットを揺らした。
ほんの1カ月前は「ストライカー」と呼ばれることに違和感を覚えていた男の表情には、確固たる自信にあふれている。
「点を取ることでチームに貢献している実感が持てる」という本人の言葉どおり。試合の中で相手の嫌がるポジショニングを研究し、毎試合のようにアップデート。手探りだったクロスへの飛び込みからもしっかり結果を残した。
目を引くのは、前線でボールを呼び込む動き出し。持ち前のスピードを存分に生かせるようになってきた。
名古屋戦の30分過ぎには小泉佳穂から絶妙のスルーパスで裏へ抜け出し、チャンスを創出。パリ・サン=ジェルマン戦(7月23日)の開始早々にも同じような形で好機を生み出しており、小泉とのホットラインはいまやチームの武器となりつつある。
8月6日、明治安田生命J1リーグ・第24節の名古屋戦での活躍にも期待が集まる。
昨季、横浜FC(当時J1)に所属しているときも、名古屋からはゴールを奪っているのだ。前線でうまくスルーパスを引き出し、GKランゲラックの牙城を破っている。しかも、偶然にもうだる暑さの中で開催された同じ8月のナイトゲームだった。
上位浮上を信じるレッズのファン・サポーターが待ち望むのは、リーグ、カップ戦を含めた4試合連続得点。ゴールゲッターとして覚醒してきた11番の価値は高まるばかり。
「僕の背番号に憧れて、子どもたちがサッカーを始めてくれればうれしいです」
底知れないポテンシャルを持つ『夏男』の本領発揮は、ここからである。
(取材・文/杉園昌之)
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