あと半歩、あと数センチを突き詰める日々は続いていく。FWで出場した松尾佑介の言葉が物語っている。
「(シュートでは)もうちょっとリラックスして足を振れればと思います。ただ、ここでシュートを打つのをやめてしまえば一生、入ることはないですけど、(足を)振り続ければいつか結果はついてくると信じています」
7月6日に行われた明治安田生命J1リーグ第20節の京都サンガF.C.戦は、開始5分に得たFKの流れからPKを獲得する。これを10分にダヴィド モーベルグが決めて、すんなりと先制に成功した。
前線に明本考浩と松尾、2列目にモーベルグ、大久保智明と、個の力で打開できる選手たちを並べた浦和レッズは、京都のプレスをかいくぐると、DFの背後をうまく突いていった。
中盤の中央も岩尾憲が守備的、伊藤敦樹が攻撃的なポジショニングを取ることで役割を明確化。伊藤がゴール前に顔を出した際には、厚みのある攻撃を繰り出した。
フィニッシュまでは到達できなかったが、12分の場面がそうだった。最終ラインから攻撃をやり直すと、岩波拓也が伊藤にくさびとなる縦パスを打ち込む。伊藤は右サイドに開くモーベルグへつなぐと、右サイドバックの酒井宏樹がインナーラップした。
折り返しは、ゴール前にいた明本に合わなかったが、流れたボールに左サイドバックで出場していた関根貴大が顔を出した。
相手の背後にスペースがある場面では、縦パスからドリブラーたちが果敢に仕掛ける。遅らせられた場合は、人数を掛けて相手の陣形を崩していく。
12分の場面が後者ならば、36分に得た2度目のPKの場面は前者。相手のトラップミスをさらった松尾がドリブルで切り込むと、PKを獲得した。
しかし、2度目のPKを蹴ったモーベルグは1本目と逆を狙うも、相手GKにセーブされ、追加点にならなかった。
さらに1-0で迎えた54分、CKから武富孝介にヘディングシュートを決められ、リスタートした直後にはビルドアップの連係ミスからわずか2分間で2失点を許してしまった。
それでも59分、FKの場面で岩尾がクイックリスタートを選択。右サイドでボールを受けたモーベルグがゴール前に持ち運ぶと、得意のフェイントで翻弄し、ゴール左に鮮やかなゴールを決めた。
攻守に奮闘するアレクサンダー ショルツが「今日は正直、5点くらいは入れられる試合だった」と悔やんだように、決定機と呼べる場面は多かった。
81分には江坂任のグラウンダーのクロスに松尾が合わせたが、ゴール右に逸れていった。
88分にもモーベルグのクロスを松尾が落とすと、江坂がボレーするアイデアも見せた。
さらにアディショナルタイムにも、松尾がクロスバーに直撃する惜しいシュートを放つなど、チャンスと呼べるチャンスをいくつも作り出していた。
だが、勝ち点3に届かない。あと半歩、あと数センチのヒントは、岩尾の次の言葉にあるように思える。
「クロスの質やクロスに入っていくポイントのところで、みんな猛ダッシュでゴール前に入っていくんですけど、気持ちが前のめりになりすぎてしまっている。(88分に)江坂選手がシュートを打った場面などは、前に入りすぎないように少し止まって、いいところでシュートを打っていた。そういった工夫やポイントが必要だと思います。
ゴールに一生懸命入っていく気持ちは分かりますけど、一歩引いて味方がどこに入っていくかを見たうえで違う選択ができてくると、クロスをどこに上げても人がいる状況が作り出せるのかなと思います」
相手の出方を読み、チームとして対応する力は以前よりも早くなっている。攻略点を見つけ出し、個の力も活かして好機を作り出す回数も増えてきた。
ゴール、その先にある勝利をつかむために求められるのは、ゴール前での工夫やアイデアになる。
(取材・文/原田大輔)