先週の浦和レッズニュースでも話題になったマチェイ スコルジャ監督が選手との個人面談で投げかけたひとつの質問。
「無人島にチームメートを連れて行くなら、誰と誰か?」
今季の副キャプテンで、チームの頭脳とも言うべき中盤の底を務める岩尾憲は、質問の意図をどう捉え、また誰の名前を挙げたのだろうか。
その回答が気になり、岩尾本人に直撃した。
ところが、岩尾は言う。
「実はその質問、僕はされていないんです」
選手全員が尋ねられているものだと思い込んでいたから面を食らった。
心根の優しい岩尾は面談の内容を少しだけ教えてくれた。
「監督からは、今日は自分が話すのではなく、君のことを聞かせてほしいと言われ、これまでの生い立ちや自分が歩んできたサッカー人生について話をしました」
そして岩尾は、「自分が育った環境には、身近にJリーグでプレーするような選手がいなかったこと。そのなかでどういう取り組みをしてきたか」を話したという。
さらに「大学に進学したのも、プロのサッカー選手になるためではなく、当初は教員になるのが目的だった」とも明かした。
そうしたキャリアを歩んできた岩尾が、湘南ベルマーレでプロの一歩を踏み出し、今、浦和レッズでプレーしていることを知ったスコルジャ監督は、「非常に興味深い人間だ」と感心したという。
「今までのキャリアについて話していたら、面談時間の40分が過ぎていました」
ならばと、咄嗟に思いついた。
スコルジャ監督から質問されていないのであれば、今、ここで改めて岩尾に聞いてみよう。
「無人島にチームメートを連れていくならば、誰と誰ですか?」
すると岩尾は「生きて帰るのが前提ですか?」、それとも「無人島で人生を終えるのが前提ですか?」と、問いかけてきた。
一瞬、こちらも考えて、「生きて帰ること」を条件に、まずは名前を挙げてもらった。
「生きて帰るならば……ひとりは(鈴木)彩艶ですね」
では、その心は?
「まずは力があるじゃないですか。生きて帰ることを考えると、彩艶なら動物もやっつけてくれそう(笑)。あとは重い物も運んでくれそうだし、身長があるので高いところにも手が届く。いろいろと活躍してくれそうですよね。それに、優しいからきっと、食事も譲ってくれそうだなって(笑)」
先週の記事でも紹介した大久保智明も彩艶の名前を真っ先に挙げていたが、やはりサバイバル生活では、彼のフィジカルは欲するところなのだろう。
その大久保がもうひとりに選んだのが岩尾だと伝えると、「トモは何も分かってないですね」と言って、笑いながら首を横に振った。
「だって、僕はインドア派ですからね。サバイバルの知識を何も持ち合わせていない。だから、僕がもうひとり選ぶとすれば、ワンちゃん(犬飼智也)です。キャンプが趣味のひとつであるように、その知恵を借りて生き延びたい」
岩尾が選んだのは、彩艶と犬飼だった。
「生きて帰るには最強の2トップだと思います。ただ、懸念は食料が足りるか問題ですね。2人とも身体が大きいから、よく食べる(笑)」
スコルジャ監督ではないが、岩尾の回答が「興味深かった」ので、生きて帰らないことを前提とした2人も選んでもらった。
「ひとりは(平野)佑一です。あともうひとり選ぶならば、(興梠)慎三さん。慎三さんってよく笑うんですよ。慎三さんと佑一と一緒なら、楽しく人生の最後を無人島で迎えられそうだなと思って。どうせ帰れないなら楽しく最後を迎えたいですからね」
スコルジャ監督は、この問いについて「非常に大事な質問でした」と明かしてくれたが、確かに尋ねてみると、「非常に興味深く」、そして人それぞれの考えを知ることができる問いかけだった。
(取材・文/原田大輔)
外部リンク