2016年9月11日、なでしこリーグのコノミヤ・スペランツァ大阪高槻戦で記念すべき初得点をマークして以来だという。
当時はトップ昇格1年目の18歳。三菱重工浦和レッズレディースの塩越柚歩は、WEリーグ再開初戦となったジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦で決めたゴールを、笑みを浮かべながら振り返った。
「私にとっては、かなりレアなゴールだと思います。ヘディングシュートは得意ではなくて、気が付けば、入っていた感じですかね。感触もあまり覚えていません。ただ、きれいに当ったかな。脳天とか変な場所に当たると、頭が痛くなるので……」
不得手とはいえ、頭痛を覚えない痛快な得点は練習のたまもの。清家貴子からのクロスにピタリと合わせる形もイメージどおり。
息の合ったコンビネーションは、2人だけの関係で成立したものではない。猶本光がダミーの動きでマークを引きつけ、空いたスペースに塩越が走り込んでいたのだ。
「最後は私がフリーになりましたが、相手のDFを引き出す光さんの動きがあったからこそです。チームとして、狙っていた形が出ました」
2019年に森栄次体制(現総監督)がスタートしてからチームには自己犠牲の精神がより根付いたという。
誰もが献身的なハードワークをいとわない。猶本が見せたダミーのフリーランもそのひとつ。体力面で自信を持つ塩越も、意識して取り組んでいる。
先制点もトレーニングしてきたパターンだった。清家からクロスボールが入ってくるタイミングでニアサイドに勢いよく走り込み、相手のマーカーを引きつけた。
「私がニアでつぶれて、後ろの(菅澤)優衣香さんが決めてくれました。誰かがおとりになって、誰かが決める。レッズレディースの良さが、出ていたと思います」
アタッカーとしての欲がないわけではない。塩越自身、今季は3点目。得点に絡むプレーにはこだわっており、むしろ、積極的に仕掛けて、シュートを打つことは心がけている。それでも、エゴを前面に出すことはない。
「自分が点を決めれば最高ですけど、そればかりになると、チームがうまく回りません。入る点も入りませんから」
根底にあるのは、仲間へのリスペクト。先発イレブンもベンチに座る控え組も、メンバー外の選手たちも一丸となっているという。
ベンチに回れば、悔しさを募らせることもあるが、チームの雰囲気が崩れることはない。試合中の声がけも、ポジティブなものばかり。
「森さんが選手の良さを引き出すようなリラックスした良い雰囲気をつくってくれているんです。森さんのためにも勝ちたい、リーグ優勝したいと思っている選手たちは多いはずです」
WEリーグは10試合を終えて(第11節が延期となったため)、現在3位。首位のINAC神戸レオネッサとの勝ち点差は7ポイント。次節の3月13日はノジマステラ神奈川相模原の敵地に乗り込む。
初代女王を目指す上で、「もう1試合も落とせないです」と気を引き締めている。
「先のことを考えずに1試合1試合、勝っていくことが大事です。目の前の相手に集中しないと。ここから勝ち続けないと意味がありません。
皇后杯優勝(2月27日)であらたに興味を持ってくれた方もいると思うので、面白いと思ってもらえるようなサッカーをしていきたいです。チームとして最後まであきらめない、気持ちのこもったプレーを見せます」
リーグ戦再開後2連勝に向けて、気合は十分。レッズレディースらしく、全員で勝ち点3をつかみ取るつもりだ。
(取材・文/杉園昌之)
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