辛抱の先には大きな喜びがある。我慢ではない。
自ら摂氏80度から100度近い密室に入り、ひたすらダラダラと汗を流す。今季、サガン鳥栖から完全移籍で浦和レッズに加入してきた大畑歩夢は、21歳にして、すっかりサウナにはまっている。
「鳥栖時代に先輩に誘われて、足を踏み入れたのがきっかけでした。最初はただ暑いだけで嫌だなと思っていたのですが、あるときからすごく好きになって。サウナに長い時間入り、一気に水風呂に全身つかると、飛ぶような感覚になるんですよ。あの瞬間が、最高に気持ちいい。いまはひとりでも行きますね」
鳥栖時代は毎日のようにサウナに通っていたが、浦和加入後はペースが落ち着き、週3回になっている。強度の高い練習をこなした日は、『サウナ→水風呂』のコースを2セット。翌日が軽めのトレーニングのときやオフの日になると、のんびり3セットは楽しむ。
レッズのチームメイトである明本考浩は、気心が知れたサウナ仲間。心ゆくまで汗を流すために、2人でホテルに宿泊したこともある。
春先にはサウナライフをさらに充実させるためにともにグッズショップへ。そこで気になったのは、サウナ専用帽子、そしてサウナ専用タオル。迷いに迷ったが、思い留まった。
「2人で話し合った結果、そこまでいらないかも、という判断になりました」
目下の悩みは、サウナの中で浮いた存在になってしまうこと。身長168センチ、65kg。決して大柄の部類ではないものの、毎日のトレーニングで鍛え抜いた体はどこから見てもプロアスリートのそれである。
「レッズの選手であることには気づかれていないと思いますが、すごく見られるんです。アキくんと一緒にいるときは余計に目立ってしまって……」
とはいえ、足が遠のくことはない。むしろ、熱は高まるばかり。サウナ施設の経営にも興味が出てきたほど。きっと、今日もどこかでたっぷりと汗を流したあと、例の一杯をやっているはずだ。
「『オロポ』が最高なんですよ。サウナ好きなら分かると思います」
聞けば誰もが知っているような炭酸栄養ドリンクとスポーツ飲料水をミックスしたものとか。気持ちも体もリフレッシュしたところで、6月18日の名古屋グランパス戦では勝利に導く働きを期待したい。
(取材・文/杉園昌之)
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