試合を終え、スタジアムを一周すると、ファン・サポーターに向けて深々と頭を下げる。
ピッチ上では『闘う』選手だが、ピッチを離れると謙虚で穏やか。スタッフとすれ違えば、目尻を下げ、口角を上げて歯を見せながら、「こんにちは」、「お疲れ様です」と日本語であいさつをする。
そんなアレクサンダー ショルツの人間性の一端を表しているのが、『お辞儀』だ。
「とてもいい文化だと思います」
お辞儀について尋ねると、ショルツはやはり笑顔でそう答えた。
ただ、どんな気持ちでお辞儀をしているのか、と重ねて問うと、ショルツは答えに窮した。
「感謝の気持ちを表すことでもありますし、謙虚な姿勢を見せるという意味でもあると思います。でも、誰かに教えられたわけでもなく、無意識にするようになりました。日本人の方々もやっていることですよね」
ヨーロッパでプレーしている頃は、拍手をする程度。当然ながら、お辞儀はしていなかった。
だが今では、まだ2歳で「ありがとう」と言うのも困難な娘もお辞儀をするくらい、ショルツにとってお辞儀は身近なものとなった。
お辞儀をする理由のひとつとして「日本の文化への興味」を挙げるショルツ。シーズンが始まって初めて1週間のオフとなった先週末から今週にかけて、滋賀や京都を観光した。
滋賀では琵琶湖、京都では日本三景のひとつである天橋立や数々のお寺を巡り、保津川下りも体験した。
「とてもいい時間を過ごすことができましたが、短い期間でした。もっと時間が必要です。今は全国各地を回る時間はありませんし、まだまだ日本のほんの一部しか見ていません。『サッカー選手を引退した後は日本全国を回ろう』と妻と話をしています」
連戦でも試合に出続けたいタイプ、欠場したほうが疲れを感じてしまうタイプではあるが、少しの間、サッカーから離れて英気を養った。
「これまでは修正点があってもトレーニングする時間がないまま連戦をこなしてきましたが、今はやっと時間ができました。僕自身は週末に試合があろうがなかろうが、同じように準備していきたいです」
そう話して取材を終えたショルツ。「ありがとうございました」と言い、笑顔でお辞儀しながらクラブハウスへと戻っていった。
(取材・文/菊地正典)
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