「楽しんでプレーしろ」
「誰かから言われた言葉というわけではないんですけど……いや、誰かからの言葉になるのか。小学生のときから、親父に『楽しくやれ』って言われ続けてきました。何かサッカーでうまくいかないことがあったときも、親父は『(姿勢が)猫背になっているぞ』とか『そんなプレーをしていたら、お前に次のチャンスはないからな』って言われてきました。
「以前は試合中にミスをすると、それを引きずってしまう傾向があったのですが、親父から、『ミスをして心が沈みそうになったときも、独り言のように、今日はやれる、やれる、試合を楽しもう、楽しもう、と自分に言い聞かせて気持ちを奮い立たせろ』と言われました。
「自分としても、だんだんとセンターバックをやることが今後の自分のためになると思えてきたタイミングで、家族にも『今、練習でセンターバックをやっている』と話したことがあったんです。そうしたら親父が『センターバックをやることで、アンカーの選手がこう動いてくれたら助かるといった部分も見えてくるだろうし、やって損なことはひとつもないんじゃないか』と言ってくれたんです。
「ここでタイミングよく顔を出せば、センターバックからボールが出てくることが分かるようになりました。指示にしても、自分のプレーをよりやりやすくするためという意図もありますけど、センターバックがパスを出した次の動きを考えたうえでの指示が出せるようになりました。先の先を考え、そのために自分はどう動けばいいのか。複数の選択肢を持つことで、チームの攻撃を導くこともできると思っています」
「簡潔に言えば、いないと困る存在です。試合で活躍したときには、周りのみんながポジティブな言葉を掛けてくれますけど、そんなときも親父は厳しい指摘をしてくれるんです。京都戦でゴールを決めたときも、ゴール自体は褒めてくれつつ、『あの場面では、こういうプレーができたのではないか』『本来できるはずのプレーができていなかったのはなぜだ』と疑問を投げかけてくれる。それによって自分も現状に満足することなく、さらにと、気持ちが引き締まる。今では試合後に、親父からの厳しい指摘がLINEで送られてくるのを待ってしまっている自分すらいます(笑)」
(取材・文/原田大輔)