2月12日に日産スタジアムで開催されたシーズン最初の公式戦「FUJIFILM SUPER CUP 2022」では、天皇杯王者の浦和レッズがJ1王者の川崎フロンターレに2-0で完勝。16年ぶり2回目の優勝を飾り、2022シーズン1つ目のタイトルを獲得した。
リカルド ロドリゲス体制2年目を迎えるレッズの進化がさっそく垣間見えた。
がっぷり四つに組むのではなく、したたかに守り方を変えて、巧みに横綱をうっちゃった。新チームの頭脳となっていたのは、ボランチの一角に入った岩尾憲だ。
開始から果敢に前からプレスをかけるときには穴が開かないように目を配った。
ボランチを組む柴戸が持ち場を離れ、敵陣の奥深い場所でパスを散らすジョアン シミッチまでプレスの足を伸ばせば、左サイドハーフの伊藤敦樹はすっと中に絞って、中央のスペースをケア。相手のパスコースをすべて消すのではなく、チームとして危険な場所だけを回避するようにポジショニングを取っていたという。
「どこにパスを通されれば、ダメージを受けるか、受けないのかを整理していました。自分を含めて、3人(伊藤、柴戸)のバランスが崩れないように距離感を大事にしていた」
開始7分にはショートカウンターがはまり、酒井宏樹のクロスに江坂任が合わせ、先制ゴールをマーク。前半は効果的に前進するプレスが機能した。
1点リードで迎えた後半、川崎Fの敵陣に入り、ボールに食いついて、かわれされ始めたときだった。人と配置を変えて、レッズのプレスを攻略してきたことをいち早く察知したのは岩尾だった。
前半と同じ手はもう使えない。傷口が大きく広がる前にしっかり処置する必要性を指揮官に訴えた。前からプレスをかけず、自陣で待ち構える形にシフト。
本人は「すぐに改善できなかった」と話したものの、戦術眼に加えて、周囲を動かす実行力は目を見張るものがあった。
J2の徳島ヴォルティス時代にリカルド ロドリゲス監督から4年間みっちりと指導を受け、ピッチ上の指揮官として信頼されるのも素直に頷ける。
ただ、監督の懐刀だからと言って、不遜な言動を取ることはない。チーム内の人間関係への配慮まで窺えた。
「練習試合を多くこなしていないなかで、チームとして機能したのはポジティブなこと。声を大にして伝えることは、いまのところない。江坂任選手、酒井宏樹選手らは戦術的な引き出しを持っているので、とりわけ何かを伝えることはありません」
柔軟な守備の対応力は、十分に証明してみせた。京都サンガF.C.との開幕戦(2月19日)ではゲームの組み立て、相手を崩していく攻撃のアイディアをもっと見てみたい。主導権を握ったとき、徳島から来た司令塔の真価が試される。
(取材・文/杉園昌之)
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