変革の2020年、飛躍の2021年を経て、3カ年計画の3年目——結実の2022年に13人の選手たちが浦和レッズに加わった。
リカルド ロドリゲス監督が指揮官となり2年目を迎える今季、彼らはチームにどのような効果をもたらしてくれるのか。
今回はJ1の舞台や世界を知る新加入選手たちを紹介する。
即戦力としての期待だけでなく、リカルド ロドリゲス監督のサッカーをもうワンランク上へと昇華させてくれそうなのが、徳島ヴォルティスから加入した岩尾憲である。
徳島ではピッチの中央に位置するボランチとして、監督と4年という年月をともに過ごしている。
昨季、浦和レッズと対戦したときには「コンセプトや哲学を大事に指導されているんだろうなと感じました」と話す。
同時に「体現しようとしているサッカーは1年や今日明日といった短い時間でできるものではない」と、チームに成長の余地を感じてもいる。
その岩尾は昨季も徳島で37試合に出場して3得点を記録。西野努テクニカルダイレクターも「コンプリートなMF」と称するように、ボランチらしくボールを刈り取る能力に長ければ、流れを見極めて先を読んだプレーをすることもできる。
「戦術についてはしっかりと時間をかけて理解してきたつもりです。効果的にスペースをどこに空けたいのか、どこを使いながらプレーしたいのかというのは一瞬、一瞬、変動の激しいスポーツなので、ピッチのなかでその都度、状況を理解して適切なプレーを選択できるように心がけていきたい」
言語化能力も高く、周りの戦術理解度を高める役割を担うこともできる。岩尾の加入により、チームとしてアクションしていく部分と、対戦相手に応じてリアクションになる部分の状況判断がより整理されることになる。
アレクサンダー ショルツ、岩波拓也といった2人に新たな競争意識を芽生えさせてくれそうなのが、鹿島アントラーズから加入した犬飼智也だ。
28歳と選手として脂が乗っている時期で、サッカーの楽しさに改めて気づきはじめている旬な選手でもある。
移籍に際しては「正直、悩みました」と語るも、「熱意のあるオファーに心が躍った」と心境を語った。
リーダーシップもあり、「3年計画の3年目、結実の年に本気で獲りに来てくれたことに感謝していますし、それに応えなければいけないという思いもあります」と覚悟を覗かせる。
球際の強さをモットーとする鹿島でレギュラーを張っていたように、対人の強さが魅力。ただ、それ以上に見逃せないのはフィード能力の高さだ。
相手の背後を突けるロングボールだけでなく、効果的な縦パスで後ろからゲームを作ることもできる。
昨季は最終ラインから自らドリブルで持ち上がるなど、新境地を見せていただけに、指揮官が掲げる戦術でこそ能力は最大限に発揮されそうだ。
また、昨季リーグ戦で5得点をマークしているように、セットプレーでの得点力もある。
何より2018年には鹿島でAFCチャンピオンズリーグ優勝を経験しており、アジアを知る男でもある。その経験値は、世代交代したチームにとってはプラスに働くはずだ。
今後の浦和レッズを担う新鋭として期待されるのが、サガン鳥栖から加入した20歳の大畑歩夢だ。
まずは昨季負ったケガからの復帰を目指すことになるが、「夢である海外挑戦に一番の近道になると思った」と野心もある。
U-22日本代表に選ばれた経験もあり、彼自身も2024年に開催されるパリ五輪を意識している。
「パリ五輪も近づいてきていますし、試合に出ないと代表の活動にも呼ばれないと思うので、自チームで活躍して選ばれるようにしたいです」
左利きという強みがあり、サイドバックもできれば、昨季の鳥栖では3バックの左を担っていたように守備の強さもある。
何より、彼がフィットすれば、戦術やシステムにもバリエーションが出せる可能性も広がる。
昨季、浦和レッズと対戦したときには、マッチアップした酒井宏樹から「強さと走力」を感じたと言うように、先輩たちから多くを吸収すれば、さらにスケールアップしそうだ。
新たなる攻撃の担い手として期待されるのが横浜FCから加入した松尾佑介だ。ユース時代までを浦和レッズで過ごしているだけに、「帰還」といった表現のほうが相応しいかもしれない。
「懐かしい感じもありますが、自分はトップチームの練習に参加したことはなかったので、トップチームに入って自分に何ができるかが楽しみでもあります」
横浜FCでは2シーズンにわたってJ1を戦っている。最大の特徴はスピードのあるドリブルだが、サイドでも中央でもプレーできる幅の広さに強みはある。
「リカルド監督になってからソリッドなイメージをチームとして受けています。ソリッドなサッカーをするなかでの役割を担うことはもちろんですが、いい意味でその堅いところを僕が壊していければと思っています」
J1で戦うことにより、精度や質は上がってきたとも語るように、外でプレーしようが内でプレーしようが、味方からのパスをうまく引き出し、攻撃のアクセントとなってくれることだろう。
また、クラブが「背番号11を用意して待っている」と伝えたように、その番号に期待の大きさが表れている。
そういう意味では背番号10を付けることになるダヴィド モーベルグへの期待はさらに大きなものとなる。コロナ禍とあって、来日は未定だが、ACスパルタ・プラハから加入する新戦力である。
新加入選手会見で流れたビデオメッセージによると、「スピードがあり、ドリブルが好き」という。意外性のあるプレーも得意としているというだけに、推進力と創造性で攻撃を活性してくれそうな予感が漂う。
モーベルグはスウェーデン人だが、チームには同じ北欧出身のキャスパー ユンカー、ショルツがいるだけに、雰囲気に馴染むのも早そうだ。
2022シーズンに臨む浦和レッズは明らかな世代交代を行い、大きく代謝している。それだけに、J1を知る彼らの経験値が結実の年となるタイトル奪取には欠かせないピースとなる。
(取材・文/原田大輔)