インド人が日本のカレーはスパイス不足だと感じるように、タイ人にとっても日本で食べるタイ料理は刺激が足りないようだ。
「タイ人にとっては、辛さが重要なんです。辛さが多めなのか、中間なのか、少なめなのか、それでおいしさがまったく変わってきます。東京で食べたタイ料理の感想は……辛くなかった。その一言で終わってしまいます(笑)。
でも、わざわざタイ料理を食べなくても、おいしい日本食がたくさんありますからね。なんでも好きなんですけど、一番はうな重ですね。うな重は大好きです」
日本人の味覚に合わせたタイ料理は、エカニット パンヤの口に合わなかったようだが、都内に足を運んでいることからわかるように、昨年夏の浦和レッズ加入から1年弱が経ち、日本での生活を楽しんでいるのは間違いない。
オフの日には堀内陽太と電車で出かけることもある。
「基本的に休みのときは、部屋で過ごすことが多いタイプなんですけど、タイ人の先輩と出かけることもあれば、陽太と一緒に出かけることもありますね。この前も陽太と電車で原宿まで行って、洋服とかスニーカーとかを買いました」
どちらかと言えば出不精だが、それでもタイのクラブから浦和への移籍が現実味を増した頃、日本の観光情報をいろいろ調べてみたという。
そんなエカニットの目をとらえたのが、日本一の山――。
「富士山は行ってみたいと思いました! その周りの富士五湖っていうんですか。河口湖だとか山中湖に行って、のんびりしてみたいとも思いました。
そういえば、(アレクサンダー)ショルツとアレックス(シャルク)が去年、富士山に登ったんですよね。写真を見せてもらいました。僕も登りたい気持ちはあるんですけど、実際に僕に登れるのかなって。間近で見て、その迫力を感じるだけでもいいかもしれません(笑)」
昨シーズンはまず日本での生活に慣れるのに大変だったが、「タイよりも涼しい」という気候にも文化にも適応し、今シーズンはその心配がなくなった。ペア マティアス ヘグモ新監督の戦術への理解も深め、ピッチ内での存在感も増している。
3月17日の明治安田J1リーグ第4節 湘南ベルマーレ戦では、今季初めてベンチ入りを果たした。
「試合に出られなかったのは残念ですけど、いつ呼ばれてもいいように準備していました。日々の練習でも調子がいいですし、またチャンスが来ると思うので、スタメンを狙って頑張っていきたいです。チャンスが来たら、ゴールを決めたい。ミドルシュートを狙っていきたいと思います」
仲の良い堀内も居残り練習に励んでおり、その成果はターンや縦パスの精度に如実に表れている。エカニットも負けじと、トレーニング中にゴールネットを揺らしている。親友と切磋琢磨しながら、激戦区のインサイドハーフのポジション争いに割って入るつもりだ。
(取材・文/飯尾篤史)
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