2008年から社長を務め、国内クラフトビール業界のトップを走る。新型コロナ禍でビール業界が苦しむ中、自宅でこだわりの品を味わう「巣ごもり」需要を取り込み、21年11月期まで19期連続で増収を達成した。22、23年は反動もあって横ばいだったが、新型コロナの感染拡大前より3割ほど高い水準になった。さらなる成長路線に向けて「あの手この手を打つ」と前を向く。
新型コロナが昨年5月に5類へ移行した後も「会社起因の飲み会」は以前ほど開かれないまま。一方、5年ほど前は全国300社ほどだったクラフトビールメーカーは800社ほどに急増しており、市場は拡大している。ビールの国内シェアはアサヒ、キリン、サントリー、サッポロの大手4社が圧倒的で、オリオンビール(沖縄県豊見城市)が続く。そのオリオンを数年以内に超えて「世の中のビール文化を変える」と意気込む。
注力しているのは低アルコール市場だ。22年8月に発売したアルコール度数0・7%の「正気のサタン」が好評で、アルコールが苦手な人向けに開いたイベントで「酒に弱いけれど飲みたい」といった需要を実感した。「販促に力を入れ、好評ならラインアップを増やしたい」とする。
自社の成長に向け、長野県と首都圏に加えて北海道と大阪府での販売にも注力し始めた。北海道では23年3月、北海道日本ハムファイターズの新球場に醸造所併設レストラン「そらとしばbyよなよなエール」を開店させたのを契機に、スーパーやコンビニで自社商品が置かれる割合が急増した。大阪府では26年を目指して泉佐野市にエンターテインメント型醸造所を開業して「一大観光拠点」にしたい考えだ。
コロナ禍で開けなかったファンイベントも活発化させ、今年5月には5年ぶりとなる1千人規模のイベント「超宴」を群馬県長野原町で予定する。販売に力を入れる4エリアで、小規模を含めたイベント開催を重ねていくという。
従業員225人の半数近くがコロナ禍以降に入社した人たちで、「『ビール業界の異端児』と言われる(自社の)企業文化が、ある程度できた後に入ってきた人が多い」という。自社を今も「ベンチャー企業」と評する中、革新的な取り組みに挑む人材が育つことを期待する。
社員に向けては、売り上げや業務効率などを「30%良くしてほしい」と呼びかけている。「3%、5%、10%なら今の延長線上でできるが、30%だと発想ややり方を変え、誰かを巻き込まないとできない」。会社のさらなる発展には「ベンチャー精神が大事」と改めて思っている。
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