【アイすわ I♡Suwa】(6) 越中詩郎さん(65) 東京から原村に移り住んだプロレスラー
新型コロナ感染拡大前の2019年の夏。妻と愛犬を連れて八ケ岳山麓に旅行に来ました。いい景色だなあと思い、ふらっと不動産店に立ち寄ると、諏訪郡原村の別荘地に中古物件があったんです。価格も手頃で、そこで購入を決めてしまったんです。
来てみたら、空気がきれい、水がめちゃめちゃうまい。水がいいのでコメを炊いても、みそ汁を作ってもおいしい。びっくりしました。
諏訪地域には温泉もいっぱいありました。いろんな温泉を巡るようになりましたが、どこもお湯がとてもいいんですよ。体に染みこんでいくって感じがするんです。
でも最初の冬は驚きました。氷点下20度近くにもなる過酷な寒さ。水道管が凍ると聞いて凍結防止帯を巻いてもらいました。家の中はまきストーブと石油ストーブ4台を使います。電気、まき、灯油と暖房費はばかになりません。
でも、まきストーブを見ていると飽きないんです。落ち着くんです。まきを割る手間もあるけれど、それがいい。
こちらでは買い物に行くには車が必要で、1週間分ぐらい買いだめもしなくちゃいけない。不便さが逆に新鮮なんです。東京で生まれ育ったからなおさら感じるんです。
東京にも自宅がありますが、いまは大半を原村で過ごし、プロレスの試合のオファーがあればここから出向きます。試合日程が決まれば準備を始めますが、ここは標高は高いし、坂道はいくらでもあってトレーニングには最高の環境です。
フリーのレスラーとなって10年以上になりますが、試合に呼ばれれば体調を万全にして臨む。呼んでもらった以上はしっかりと結果を出さないと次はないという意識はあります。先輩の長州力さんにはよく「練習しとけよ」と言われました。短い言葉ですが、準備を怠るなという深い意味が込められていました。
原村に来てから体調はとてもいいんです。きれいな空気とおいしい水って本当に体に大事なんですね。それに地元の人はみんな温かい。まきに困れば、親身になって調達法を考えてくれる。
ここに来てから旅行に行きたいと思わなくなりました。水も景色も人も良くて、いまの暮らしで十分なんです。
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〈こしなか・しろう〉東京都出身。中学時代にプロレス中継を見てファンになる。高校卒業後、企業に就職するが、プロレスラーの夢が諦められず全日本プロレスに入門し、1979年にデビュー。新日本プロレスに移籍後は初代IWGPジュニアヘビー級王座を獲得するなど得意技のヒップアタックを武器に活躍。2003年からフリーで活動する。原村に住んでからは茅野署の特殊詐欺被害防止活動などに協力している。原村の八ケ岳自然文化園で。
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