耳から顎にまでたくわえた髭は、ほとんど手入れしていない。
「今や雑草状態です(笑)」と今津佑太は笑った。
何本も、そして何本も。納得がいくまで、今津はボールを蹴り続ける(4月8日撮影)
彼の「相手を叩き潰す」プレーともリンクした、こういう野性味に満ちた姿に魅了されたファンも多い。その事実は、以前もLINE NEWSでお伝えした。
今回、今津を取り上げようと考えたのも、読者の皆さまから「今津選手の現況を知りたい」という声が筆者あてに多数、寄せられたからだ。今季、公式戦でのメンバー入りは1試合もない彼を心配しているサポーターが、実に多いのだ。
ゲーム練習に入る前のウオーミングアップで、磯部峰一フィジカルコーチの言葉に真剣な表情で耳を傾ける今津。まずコンディションをあげないと、その先はない(3月22日撮影)
「本当ですか?」
今津は意外そうに瞳を見開いた。
「でも、自分が思っている以上に応援してくれる人がいることは、本当にありがたい。試合に絡めていなくてもゲートフラッグを掲げてくれたり、横断幕を張ってくれたり。そういう人たちのために、僕は絶対に、このチームで活躍しないといけない」
4月9日、福岡戦の前日練習の準備。メンバー入りはないとわかっていても、今津の姿勢は真剣そのもの
どうして、試合に絡めないのか。それは、自分自身が1番、わかっている。
「単純に、自分の力を出し切れていない。宮崎キャンプの後半に傷めてしまってから、コンディションがあがってこない。自分の持ち味であるタフさや強さが示せていないんです」
特に今季の戦術は、守備の局面で1対1に晒される場面が多く、CBの「強さ」がなおさら求められる。それを表現できないとなれば、チャンスは勝ち取れない。
監督のトレーニングの指示にも集中して耳を傾ける(4月8日撮影)
「一時期よりはいいプレーも出てきたが、その回数が少ない。まだ60〜65%くらいの状況で、せめて80%までは到達しないと」
今津は冷静に自己を分析する。
人生、難しい時期もあるが、そういう時にどう振る舞うか。その大切さがわかっていても、ネガティブな状況ではなかなか実践できない。
毎日のトレーニングは本当に疲れる。だがこの蓄積が自分の花を開かせると今津は信じている(4月8日撮影)
今津佑太はどうか。今も彼は、最後まで走り、最後までボールを蹴り続ける。
きっとチャンスはくる。その姿を見つめながら、そう確信している。
今津佑太(いまづ・ゆうた)
1995年7月8日生まれ。山梨県出身。流通経済大柏高時代は高円宮杯プレミアリーグで日本一を経験。流通経済大に進学した後も、大学サッカー選手権での優勝経験を持つ。2018年に甲府加入。1年目からレギュラーで活躍し、2021年から広島でプレー。今年は当初、ヒップホップ系の髪型にしていたが、これが賛否両論。今はスッキリとしたスタイルに落ち着いている。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】