「このサッカーに必要なものは、強気な姿勢。それを継続する勇気だ」
何度も首を振り、周りを確認しながらポジションをとる。トレーニングの時から基本をしっかりと意識することが、荒木の成長の源である(3月23日撮影)
ミヒャエル・スキッベ監督が打ち出したサッカーのコンセプトについて、足立修強化部長が語った言葉だ。野上結貴も「前がプレスに行けば、後ろは絶対についていくべき」と語っている。
ウラをとられる怖さは、DFはみんな感じているとは思うが、それを払拭して前に出る強気な姿勢が必須なサッカーをやっているのが、今の広島である。
練習でいいプレーを見せ、「ナイス隼人!」と声をかけられた。嬉しそうな表情がなんともかわいらしい(3月23日撮影)
しかし26日のルヴァンカップ・対清水戦で、荒木隼人を中心とする最終ラインは深かった。16分、清水の速攻を潰せずに失点したのは、前からの守備がはまらず、最終ラインを上げるスピードが遅かった故にスペースを与えてしまったからだ。
広島のレジェンド・青山敏弘と練習で戦うことで、荒木自身は大きな成長を遂げてきた(3月23日)
「自分でも、ラインを上げるスピードが重いと感じていた」と荒木は言う。
「ラインが一度下がった後、もう一度上げ直す時のスピードが、チーム全体として遅かった。ベンチから(ラインをあげろと)声がかかったのですが、言われてからやるのではなくて自分たちで試合開始からやっていかないと」
練習でも常にいいポジションをとり、荒木は自分の仕事を探し続ける(3月23日撮影)
もちろん「ボールの失い方にもったいないシーンが何本かあったので相手にプレッシャーがかからなくなった」という野上の指摘も当然だ。
だが、そこの修正も含めて、3バックの中央にいる荒木には期待したい。前線の選手にプレッシングに行かせること、ミスを防ぐために集中を促すことも含め、チームにいい影響を与えてほしいと願う。
ジュニオール・サントスに対して厳しい表情で要求する荒木。こういう姿が試合で何度も見られるようになれば、荒木はさらに成長できる(3月23日撮影)
「もっともっと自分がリーダーシップをとって、チームに声をかけて是正しないといけない」
レアンドロ・ダミアン(川崎F)のような屈強なDFを完封できる強さは圧巻。高速アタッカーにウラをとられても追いついてカバーするスピードは、この試合で何度も見せてくれた。
多くの選手たちが両手を膝につくほど厳しいトレーニングが終わり、荒木は充実の表情を見せる(3月23日撮影)
身体能力もボールを奪うスキルを持つ彼が強いリーダーシップを身に付ければ、鬼に金棒。努力家であり、優しい人柄で若手から慕われる荒木隼人なら、きっとできる。
荒木隼人(あらき・はやと)
1996年8月7日生まれ。大阪府出身。G大阪の育成組織で育った後、2012年に広島ユース加入。2019年、関西大を経由して広島のトップチームに加入。ルーキーイヤーからポジションをとり、この年に日本代表にも招集された。2021年から、桑原裕義や水本裕貴ら広島の歴史をつくった選手たちが背負った4番を背負う。料理が得意で、若い選手たちを家に招き、手料理を振る舞っている。
【中野和也の「サンフレッチェ熱闘日誌」】