【女子テニス】「練習のたびに出来ることが増えている」。上り調子の加藤未唯が未踏の高みを目指す
「それ、聞かれると思ってました」
いたずらっぽい笑みを浮かべ加藤未唯がそう言ったのは、BNPパリバオープンのダブルス2回戦、C・ガウフ/J・ペグラ戦後。勝利の鍵にもなった、「ガウフのサーブ攻略」について尋ねた時だ。
このやり取りに至る伏線は、初戦勝利後にある。今季既に2度対戦し敗れたガウフ/ペグラ対策を問うと、加藤は「ガウフのサーブは良いので、特に跳ねるこのコートでブレークするのは難しいと思う」と、単6位、複3位の実力者を評した。
ところが実際には、1セットだけでガウフのサービスゲームを2度ブレーク。勝負の掛かった10ポイントマッチタイブレークでも、ガウフのサーブでポイントを奪った。
本人はその理由を、以下のように分析する。
「だいたい、ここに来るかなというのが分かったんです。セカンドセットはキックサーブを多く打たれたけれど、最後の方ではそれにも対応できたので」
冷静にそう語ると、「今、感覚がいいんですよ」と彼女は無邪気に笑った。
第2シードのガウフ/ペグラ相手に豪快なプレーで勝利を手にした加藤/スチアディ。加藤は右側の前衛
今回のBNPパリバオープンに向かう10日ほど前に、加藤は当初の渡米予定を切り上げて、中東遠征後に一端日本に戻っている。
直接の理由は、直近のドバイ大会でガウフ/ペグラ組に逆転負けを喫したこと。
「最近、拠点に戻って練習するたび新しくできることが増えている。だから今回も帰ったら、また何か覚えられるんじゃないかと思った」からだ。
プロとしてツアーを転戦してから、はや10年。それでも、これだけの短期間で多くの習得や学びがあるというのは、こちらとしては驚きだった。
その所感を伝えると、彼女は「確かにそうですね」とつぶやき、続けた。
「20年テニスをやってきて、まだ出来ないことがある。それは良い意味でも悪い意味にも捉えられますが、28歳でもまだ上り坂と思えるのは良いことかな」……と。
日々成長を実感する加藤は、準々決勝の勝利直後も、パートナーのアルディラ・スチアディを伴い練習コートに向かった。
次の試合に向け、調整しておきたいことがあったからだ。
準決勝の対戦相手は、長身パワーヒッターのアダッド・マイアと、ダブルス巧者のラウラ・シグムンド。
「嫌なところに打ってくる」と警戒するシグムンド対策を講じ、積み重ねた練習の確かさを信じて、さらなる上を目指す。
加藤未唯(かとう・みゆ)
1994年11月21日生まれ、京都市出身。2017年全豪OP複ベスト4、2018年東レPPO複優勝。昨年5月から組み不動のパートナーとなりつつあるスチアディと共に、今年1月にツアー複優勝。
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