サーブ&ボレーで、相手の裏をかいてみせる。
ハーフボレーからネットにつめ、ボレーを2本、3本と立て続けに打ち返す。
あるいは、ストロークで相手をベースライン後方に押し込んでから、絶妙なドロップショットを沈める。
相手を押し込み、ドロップショットを決める=24日の1回戦より
これ、誰のプレーのことかというと、ダニエル太郎。マイアミ・オープンで予選を勝ち上がり、初戦でもハウメ・ムナルを6-3,6-4のスコアで圧倒した、躍進中の選手である。
ダニエル太郎の昔を知るファンからすると、冒頭に記した言葉の数々が、彼を表したものとは考えにくいかもしれない。
なにしろダニエルと言えば、コート後方に下がり、延々とストロークを打ち続ける粘り強さが代名詞だった。
サーブ&ボレーを試みるダニエル。難しいボレーもそつなく決める=24日の1回戦より
その彼が今や、あらゆるショットを操る攻撃的な選手と様変わり。実際にその成果が、今季の戦績に直結している。
「ボレーやドロップショットなどの武器は、昔からあったが使わなかったのか? それとも、最近獲得したのか?」
この問いに対しダニエルは、「昔からあったと思います。でも前は、自分にはそれができると全く信じられなかっただけで」と即答した。
「前に出られる場面を増やしている」のも大きいとダニエルは言う。
「自分から押せば、相手にダメージを与えられているのが見え始めている。前は、僕にはこれは続けられないなと勝手に考えてしまっていたが、今は自分の能力を信じられているのかな。外(そと)に何かを探るのではなく、自分の中に答えはたくさんあると思っています」
サーブからのリターンを迷わず打ち込みウイナー=24日の1回戦より
自分の中に答えを探した時、見つかった未使用の多くの武器。
それらを使う術を考え、自分を信じた土台の上に、“新生ダニエル”のスタイルが築かれた。
現在のランキングは106位だが、今季に限った「ランキングレース」では58位。
ダニエルはこの数字こそが、現在地を測る指標だとも見ている。
26日に行われる2回戦の対戦相手は、元9位で現34位のファビオ・フォニーニ。
「ベテランでとても尊敬している選手」とダニエルが称える天才肌の34歳は、今の実力を測る、格好のバロメータになる。
ダニエル太郎(だにえる・たろう)
1993年1月27日、米国ニューヨーク市生まれ。アメリカ人の父親の仕事の都合で、幼少期からアメリカ、日本、スペインに移り住む。
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