天皇陛下と雅子さま
天皇陛下と雅子さま、愛子さまが、両陛下が30年前に祝賀のパレードで乗られたロールス・ロイスのオープンカーの前でほほ笑まれている。天皇陛下が、
「懐かしいですね」
と感想を述べられると、雅子さまは、
「ちょっと恥ずかしいですね」
とはにかまれる。そんなご両親を、愛子さまは笑顔で見つめられていた。5月30日、両陛下のご成婚30年を記念した企画展をご覧になった天皇ご一家。2時間以上かけ、両陛下と愛子さまは目を細めながら、懐かしそうに展示をご覧になっていたという。
「今年の6月9日で、両陛下はご成婚30周年を迎えられます。コロナ禍が完全に終息していないことから、当日は天皇ご一家だけでお祝いされることになると聞いています。皇室の方々は節目のプレゼントを大切にされていますので、今回も両陛下はお互いへの贈り物を用意されているようです。
じつは、記念日を前にした最近になって、陛下のご著書に載っているある水彩画が、“陛下から雅子さまへのプレゼントなのでは……”と、宮内庁で話題になっているのです」(宮内庁関係者)
ご成婚前の1993年2月に、学習院教養新書から非売品として出版された『テムズとともに』が、今年4月に紀伊國屋書店から新装復刊され、話題を呼んだ。同書を開いていくと、緑に囲まれた校舎が描かれた扉ページの水彩画が目に入ってくる。
「このご著書は、陛下にとって“青春の貴重な思い出”となった、英国での2年間の留学生活の体験を綴ったエッセイで、陛下のお考えを知るうえでいまや宮内庁職員にとって必読の書となっています。水彩画に描かれている校舎は、陛下が学ばれたオックスフォード大学のマートン・コレッジだと聞きました」(前出・宮内庁関係者)
目をこらすと、河畔から校舎を望む3人の人影が描かれている。
その新装版の扉を飾る挿絵を描いた藪野健さんは、日本藝術院会員で府中市美術館の館長なども務める洋画家だ。藪野さんに“河畔の3人”について聞くと――。
「あの挿絵はテムズ川の支流の畔から、マートン・コレッジを望んだ私のスケッチなどを基に描きました。復刊にあたっての“あとがき”に陛下が雅子さまと再訪を願われているという一節がありました。そこから想像して、オックスフォードを両陛下と愛子さまが訪れていらっしゃるイメージで絵を完成させました」
雅子さまも外務省職員時代にオックスフォード大学へ留学されており、両陛下は同窓生。藪野さんが読んだのは、新装版で“復刊に寄せて”と新たに加筆された章だ。陛下はこう綴られている。
《遠くない将来、同じオックスフォード大学で学んだ雅子とともに、イギリスの地を再び訪れることができることを願っている》
■陛下の留学中には上皇ご夫妻がご訪問
陛下の願いを感じ、藪野さんはご一家を描いた。
「そのことを侍従の方を通じてお伝えしたところ、陛下は『私たちのことかと思いました』とお話しされたそうで、絵をご覧になってすぐにお気づきになられていたようです」(前出・藪野さん)
この水彩画のタイトルは『Merton College』。
「陛下は1990年代から美術史の先生方と私的な研究会を開かれていました。私もその会に参加していたことで、陛下とお会いする機会がありました。
私は1970年ごろから欧州各国のカントリーハウス(地方にある貴族の邸宅)を巡っていて、陛下にオックスフォードを訪れたお話をさせていただいたことがありました。私がオックスフォードで巡った場所を陛下もすべて訪れていらしたので、とても驚きましたね。
陛下はその当時のことを覚えていてくださったのでしょう。昨年末に侍従の方から、挿絵のお話を頂いたのです」(前出・藪野さん)
陛下の留学中、アフリカご歴訪の帰路に上皇ご夫妻が英国に立ち寄られ、陛下がオックスフォードの街を案内されている。
「天皇陛下と雅子さまは、今後国賓として訪英されることが決まっています。現在学習院大学文学部4年生の愛子さまは来年3月に卒業されます。卒業後は、陛下や三笠宮家の彬子さまが学ばれた実績のあるマートン・コレッジに留学される可能性は高いとみられています。
愛子さまが留学中に両陛下が訪英されれば、ご家族が一緒にオックスフォードの街を歩き、思い出の場所を巡られるでしょう」(皇室担当記者)
ご家族で英国へという天皇陛下の“祈り”が込められた水彩画が現実のものとなる日はそう遠くないようだ。陛下の学習院幼稚園時代からのご友人の速水敏昭さんは、留学中の陛下を訪ねたことがある。
「寮ではお茶をご馳走になり、お部屋にもお招きいただきました。留学時に、上皇ご夫妻がオックスフォードにお立ち寄りになっていたこともよく覚えています。愛子さまが英国にいらっしゃるときには、両陛下も同じようにお訪ねになると思います。
陛下はとても誠実な方。『全力でお守りします』と、雅子さまにプロポーズしたお言葉をいまも守り、幸せなご家庭を築いていらっしゃるといつも感じています」
■雅子さまのために富士山の絵を
ご成婚から30年。愛子さまのご誕生という喜びの一方、雅子さまはご病気と20年近く闘い続けてこられた。じつは、ご体調を崩される前、絵画に活力をお求めになろうとしていたという。雅子さまの知人はこう明かす。
「ご家族の影響で、雅子さまは幼いころから絵がお好きです。“洋画家の絹谷幸二さんに絵画を習いたい”と希望されたことがあったのですが、愛子さまを授かる前のことで、残念ながらそうした願いはかなわなかったのです」
雅子さまの密かな願いを、陛下は静かに受け入れられていた。
「2013年のお誕生日に際して公開された机に向かう陛下のお写真を見て驚きました。絹谷さんが描いた富士山の絵がお部屋に飾られていたのです。じつに陛下らしいお心遣いだと……」(前出・知人)
令和となってから、ご公務でも“家族の絆”を感じることが多いと、前出の皇室担当記者は語る。
「1泊2日という日程での地方行幸啓は、雅子さまのご体調への配慮とご公務を両立する形であると感じます。また、皇后のお務めであるご養蚕にも、陛下や愛子さまができる範囲で同行され手伝われるようになっています。
ご一家で支え合われてお務めに臨まれることは、“令和流”の象徴の一つだといえるでしょう。6月には、両陛下はご即位後初めて国賓としてインドネシアを訪問される“大任”も控えています。陛下と愛子さまのサポートで、雅子さまはご体調の維持に努めていらっしゃるそうです」(前出・皇室担当記者)
ちなみに水彩画は、まだ藪野さんの手元にあるそうだ。
「ゆくゆくは陛下に差し上げようと思っています」
陛下が『テムズとともに』を出版され、雅子さまとのご成婚から30年。ご一家は、届いた水彩画を眺められ、テムズ川の畔に思いを馳せられるのだろう。『Merton College』が描き出した家族の絆は、永遠に光り輝く――。