直前まで雨が降っていたにもかかわらず、お二人の門出を祝福するため沿道に集まった約20万人もの老若男女。雅子さまは感極まり、光る涙を拭われた――。
ご成婚パレードの感動は、いまも鮮明に国民の心に刻まれていることだろう。6月9日、天皇陛下と雅子さまは、ご成婚30周年を迎えられた。宮内庁を通じて、両陛下はご感想を公表。
《今後とも国民の幸せを願い、二人で協力しながら務めを果たしていくことができればと考えています》
などと綴られ、“国民に寄り添い続ける”という陛下と雅子さまのご決意も、あらためて鮮明に打ち出されていた。ちょうどこの日、両陛下がインドネシアを国賓として訪問されることが閣議決定された。ご即位後初めての国際親善を目的とした外国ご訪問となる。
「両陛下は6月17日から23日にかけて、首都ジャカルタでの歓迎式典やジョコ大統領夫妻との会見に臨まれます。ジョコ大統領は同国に招待したいという内容の親書をご即位直後に宮内庁へ届けており、昨年来日した際にも、陛下に直接“ぜひお越しください”と伝えていました。
また今年インドネシアは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国です。岸田文雄総理が進める東南アジア諸国との関係を深めるという意味合いもあります」(宮内庁関係者)
しかし、閣議決定はご出発の8日前というギリギリのタイミング。この状況は異例というよりも異常な事態だという。
「そもそも、天皇陛下と雅子さまのインドネシアご訪問が発表されたのは、4月6日のことです。エリザベス女王の国葬などのような冠婚葬祭ではなく、天皇皇后両陛下が国際親善のために国賓として外国を訪問される場合、閣議決定は出発の約1カ月前までに行われるのが慣例です。
閣議決定があって初めて、具体的なスケジュールが確定し、関係省庁が訪問国と正式に行事や視察先を決めていき、警備態勢を整えていくことになります。今回のようなギリギリの日程確定は、これまではありませんでした」(前出・宮内庁関係者)
2カ月前に発表されていたにもかかわらず、なぜ閣議決定がご出発の直前になってしまったのか。外務省など省庁の事情に詳しい「インサイドライン」編集長の歳川隆雄さんはこう明かす。
「宮内庁や外務省の内部からは、“新型コロナの5類移行や、イスラム教徒の多いインドネシアがラマダーン(断食月)だったため、日程調整が遅れてしまった”などという声が聞こえてきます」
こうした“言い訳”が漏れてくる背景には、省庁ならではの事情があるようだ。
「日中に飲食を断つラマダーンの期間中は、イスラム圏の多くで勤務時間や学校の時間が短くなります。インドネシアにそうした事情があることは、かねてわかりきっているはずです。官僚たちが“言い訳”を用意せざるをえないのは、首相官邸の“ゴーサイン”がなかったからでしょう」(前出・皇室担当記者)
何よりも、政府中枢の“皇室軽視”ぶりがすべての原因だという声が上がっているのだ。
■ギリギリの準備で雅子さまにご負担が
「閣僚などの不祥事が続いても、岸田政権の内閣支持率は依然として40%台前後をキープしており、“この状況で衆院を解散して総選挙をやれば勝てる”と政権幹部の多くは考えています。
インドネシアご訪問を政権として進めたにもかかわらず、岸田総理は解散する機会を念頭に入れた政治日程づくりを優先していたことにより、両陛下の日程確定を後回しにしてしまったのです。これでは岸田政権の“驕り”が表面化していると批判されても、否定できないのではないでしょうか」(自民党関係者)
ご出発までの準備で何よりも懸念されているのは、雅子さまへのご負担ばかりでなく――。
「ご訪問の日程は、雅子さまのご体調への負担を可能な限り減らす“ゆとり”を設けられるように組まれています。しかし、両陛下のご出発まで8日しかない短期間での準備では、関係各所との調整ミスが生じてしまいかねません。
また春の園遊会や岩手県行幸啓では、大幅に所定時間より遅れて進行するケースが頻発。宮内庁では担当部署のスケジュール管理能力の低下が指摘されており、不測の事態を招きかねない状況があるのです」(前出・宮内庁関係者)
さらに、インドネシアの警備担当者との調整も短期間でまとめ上げる必要がある。
「インドネシアは東南アジア地域の大国とはいえ、近年も爆弾テロ事件がジャカルタでも発生するなど、治安情勢は決して安定しているとは言えません。海外ご公務で両陛下を危険にさらすようなことはあってはなりません。はたしてギリギリの日程決定で、十分な警備態勢を敷くことができるのでしょうか」(前出・皇室担当記者)
30年前のご成婚パレードが始まるや雨がやみ、水滴で光り輝く道路を進まれた陛下と雅子さま。政府の皇室軽視により不安が尽きない国賓ご訪問となるが、現地でもパレードのときのような輝く笑顔を見せていただきたい。