「本院議員、安倍晋三元内閣総理大臣は、去る7月8日、参院選候補者の応援に訪れた奈良県内で、演説中に背後から銃撃されました。(中略)享年67歳。あまりにも突然の悲劇でした」
10月25日の衆議院本会議で、こう語ったのは立憲民主党の野田佳彦元首相(65)。この日、野田氏は7月の参院選演説中に銃撃を受け死去した安倍晋三元首相(享年67)への追悼演説を行った。
首相在任時は国会などで安倍元首相と舌戦を繰り広げた野田氏は、「私は、生前のあなたと、政治的な立場を同じくするものではありませんでした」としながらも、「あなたは、いつの時も、手強い論敵でした」「あなたは議場では「闘う政治家」でしたが、国会を離れ、ひとたび兜を脱ぐと、心優しい気遣いの人でもありました」と敬意を表明。
そして、かつて遊説中の安倍元首相の持病を揶揄するような発言したことを謝罪し、「再びこの議場で、あなたと、言葉と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火花散るような真剣勝負を戦いたかった。勝ちっ放しはないでしょう、安倍さん」とその突然の死を悼んだ。
野田氏の演説を国会で聞いていた安倍昭恵夫人(60)は「先生にお願いしてよかった。主人も喜んでいるでしょう。原稿を仏壇に供えたい」と目に涙を浮かべて謝意を述べたという。さらに、普段は野田氏と政治的スタンスを異にする人々からも、多くの称賛が寄せられた。
称賛を浴びた安倍元首相への追悼の辞といえば、9月27日に行われた国葬での菅義偉前首相(73)の弔辞も記憶に新しい。友人代表として「七月の、八日でした。信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい、同じ空間で、同じ空気を共にしたい」と語り始めた菅前首相。そして、安倍元首相に2度目の自民党総裁選出馬を嘆願した際の思い出を振り返りながらこう語った。
「最後には、二人で、銀座の焼鳥屋に行き、私は、一生懸命、あなたを口説きました。それが、使命だと思ったからです。三時間後には、ようやく、首をタテに振ってくれた。私はこのことを、菅義偉生涯最大の達成として、いつまでも、誇らしく思うであろうと思います
首相在任中はスピーチが「棒読みすぎる」と指摘されたこともある菅前首相だったが、思いの丈がつまった弔辞の内容は絶賛された
2人の首相経験者のコメントが評価を受けるいっぽう、厳しい声が寄せられる人も。岸田文雄首相(65)だ。
国葬で弔辞を読み上げた岸田首相だったが、「Courage is doing what is right. 安倍さん。あなたこそ、勇気の人でありました」と突然英語が入ったことや、総理大臣としての弔辞だったため、安倍元首相との私的なエピソードが盛り込むことができず、菅前首相と比較されて印象の薄さを指摘する声が続出した。
《全然心のこもってない感じの岸田首相の弔辞に比べて菅さんの弔辞 これは泣けるわ… 》
《菅さんのあの熱い心のこもった弔辞と比べると、印象薄かったのは紛れもない事実。》
そして、野田氏の演説が喝采を受けたことによって、改めて比較されることに。ネット上では、こんな声が。
《なんかこの演説聞いてると、岸田より野田の方がいいんじゃね?とか思ってくる》
《野田佳彦元総理の追悼演説、よかったな。岸田と違って中身があるわ。》
《野田さんの、演説何度聞いても、素晴らしいですね。。。岸田の演説が一番微妙だった。。。》
支持率低迷が続き、苦しい政権運営を余儀なくされている岸田首相。打開する“名スピーチ”を期待したいところだが……。