7月3日、第79回日本芸術院の授賞式に臨まれた両陛下
インドネシアご訪問を無事に終えられて10日後の7月3日、天皇陛下と雅子さまは「第79回日本芸術院賞」の授賞式に出席された。
「帰国後初めてとなる公式行事でしたが、雅子さまも晴れやかなご表情で臨まれていました。またこの日は、皇居に戻られた後に宮殿で、日本学士院と日本芸術院の新会員42人と面会し、懇談されています。
雅子さまは、7月9日に横浜市で開かれた『第22回国際自動制御連盟世界大会』の開会式にも出席されました。当初この開会式には陛下単独でのご出席とメディアにアナウンスされていましたが、両陛下揃って臨まれることになりました。
久しぶりの海外での国際親善でしたので、帰国後のご体調を心配する声も上がっていましたから、その懸念が杞憂であったと安堵しております」(皇室担当記者)
雅子さまのご体調面に配慮した日程が組まれたインドネシアご訪問は、今後の外国ご訪問における“モデルケース”となっていくという。
「雅子さまのご体調しだいで柔軟に日程を組むということが、訪問する相手国にも受け入れられる前例となりました。今後はこうした状況を相手国に理解してもらうことで訪問スケジュールが組み立てやすくなるため、訪問される国々の範囲がますます広がったといえます」(宮内庁関係者)
次の訪問先として可能性が高い国のひとつが英国だ。昨年9月に亡くなったエリザベス女王から、天皇陛下と雅子さまは国賓として招待されていたが、コロナ禍のためにかなわずにいた。
「チャールズ国王が即位されてからも、両陛下への招待は引き継がれています。しかも英国側も“できるだけ早期に”という意向を示しています。昨年の女王の国葬に参列するために両陛下は訪英されていますが、いつまでも招待を先延ばしにはできません。早ければ来年にも訪英される方向で調整が進むでしょう」(前出・宮内庁関係者)
■英国、トルコへのご訪問構想に続き…
6月には、高円宮妃久子さまがフィンランドや英国を訪問されるなど、皇室全体で世界を舞台とするご活動が加速している。前出の皇室担当記者は、
「英国のほかに、来年日本との外交関係樹立100周年を迎えるトルコが、両陛下のご訪問国の候補として政府内で挙がっています。12年前の東日本大震災のときには、トルコの救援隊が行方不明者の捜索に当たるなど、献身的に日本を支援しています。
今年2月に発生したトルコ南部の大地震にも日本は救援隊を派遣したほか、天皇陛下と雅子さまは発生の3日後にお見舞いのお気持ちを伝えるため、エルドアン大統領へ電報を送られています。同国と地理的に近いウクライナの情勢など懸案はありますが、陛下と雅子さまも、長い友好の歴史があるトルコへのご訪問が実現することを願われているようです」
さらに、歴代の天皇皇后が果たせなかった韓国ご訪問も、政府内で急浮上しているという。
「2年後の2025年は、日韓国交正常化60周年にあたります。この節目に、天皇陛下と雅子さまの韓国ご訪問を実現させようという動きが政府内にあるのです」(前出・宮内庁関係者)
これまで韓国の大統領が国賓として来日したことはあったが、韓国が日本から国賓を招いたことは一度もない。両陛下の韓国ご訪問計画には、外交で“政治的な遺産”を残したい岸田文雄首相の思惑も絡んでいる。
「岸田総理は、昨今急速に改善している日韓関係の総仕上げとして、天皇皇后両陛下の韓国ご訪問を実現させたいと考えているようです。昨年、尹錫悦大統領が政権に就くまで、日韓関係は“戦後最悪”といわれる水準でした。しかし尹大統領は、政治や経済、文化など多分野で関係を改善する取り組みを進めていて、岸田総理もこれをチャンスと捉えています。
現在、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海へ放出する計画に反発する韓国世論も根強い状況です。ただ、岸田総理は7月11日から訪れるリトアニアで尹大統領と会談します。昨年から日韓の首脳は、かなりハイペースで会談の場を設け、懸案に対処する環境を整えています。
また、3月のウクライナ訪問で戦後の総理として初めて戦地となっている国を訪問し、G7サミットで4つの核保有国首脳を初めて広島に集めるなど、総理は“初”という実績に執念を燃やしてきました。前例のない天皇皇后両陛下の韓国ご訪問が実現すれば、歴史に名を残せると考えているようです」(官邸関係者)
かつて上皇ご夫妻が訪韓する計画があったが、実現することはなかった。皇室ジャーナリストの久能靖さんはこう期待を抱く。
「1986年、皇太子だった上皇ご夫妻が訪韓する方向で調整が進みましたが、美智子さまのご入院や、日本統治時代の記憶が色濃く残る韓国国民の対日感情への配慮から見送られていたのです。昨今、日韓関係が好転し始めたことを機に、両陛下に訪韓していただくことで、さらに両国の関係を深めることにつながるのではないでしょうか」
いざ韓国へのご訪問が実現することとなれば、陛下と雅子さまが何を語られるのか、日韓のみならず世界中が注目する――。
「そして外務省職員としてのキャリアを離れて皇室に入られた雅子さまだからこそ、次世代の日韓関係を象徴するご訪問を成功に導かれるはずです。もちろん、両陛下を歓迎する韓国の世論も必要ですし、現地での安全性も確保されなければならないことは言うまでもありません」(前出・皇室担当記者)
上皇ご夫妻も“未踏”の国へのご訪問。日韓両国が“歴史の因縁”を乗り越えられるかどうかは、2年後に両陛下が訪問できる環境が整っているかにかかっている。