マイナンバーカードの発行数が3,590万枚と急増(’21年3月末・総務省)。1年で約1.8倍、保有率は28.2%となった。そんな、マイナンバーカードについて経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■菅政権で申請1.5倍も、本当に便利になるの?
増加の要因は2つあり、1つはマイナポイント。マイナンバーカードとキャッシュレス決済を連携しチャージやお買い物をすると、1人5,000円までポイント還元を受けられます。
マイナポイントをもらうには3月末までのカード申請が必要だったため、2月は338万件、3月は686万件と、駆け込みで申請した方が多かったようです。菅政権発足後、申請数は約1.5倍にもなりました。
もう1つは、マイナンバーカードを持たない人にQRコード付きの申請書が送られたことです。QRコードを読み込めば住所氏名は登録済みで、顔写真もスマホ撮影でOK。自宅からの手続きが簡単なので、申請が増えたのでしょう。
とはいえ、国の目標は「’22年度末までに全国民がマイナンバーカードを持つこと」です。いまだ、この目標に遠く及ばないことにも、いくつか理由が考えられます。
まずは、セキュリティ面です。カードの紛失や盗難で悪用される危険性や、カード情報の漏洩など、情報管理に不安があります。
次に、マイナンバーカードをもつメリットが実感できない点です。マイナンバーカードがあると、コンビニで休日でも住民票の写しを取得できますが、住民票が必要になる機会は多くありません。
また、運転免許証との一体化では、’26年度中に始める計画を’24年度末に前倒ししましたが、いっぽうで今年3月下旬から健康保険証として利用が始まる予定は、不備が見つかり、10月以降に延期されました。
そもそも、マイナンバーカードを運転免許証や健康保険証として利用するには、カードに内蔵された運転免許証番号や健康保険証番号などを確認するため、読取り機が必要です。
いま、全国の病院に読取り機の設置を進めていますが、運転免許証は、金融機関や不動産業者、酒類の販売、運転中などさまざまな場所で提示を求められます。読取り機が行き届かなければ、カードを複数持たねばならず、一体化のメリットは薄れてしまいますが、すべての利用場所に読取り機を設置できるのでしょうか。
政府はマイナンバー制度に、過去9年間で約8,800億円もの血税を使用。また、6日には、デジタル庁の創設を含む「デジタル改革関連法案」が衆議院を通過しました。ですが、「住基ネット」の失敗や’20年の「特別定額給付金」騒動などを見てきましたから、デジタル化法制に不安は尽きません。
なにより、なぜカードが必要なのでしょう。カードがなくても「マイナンバー」の入力で動くシステムは作れないのでしょうか。
政府は、マイナポイントの申請期限を4月末まで延長しました。コロナ禍で困窮する方も多いなか、血税の本当に必要な使い道を考えていただきたいものです。
「女性自身」2021年4月27日号 掲載