(写真:時事通信)
「米経済誌『フォーブス』によると、大谷選手の2023年の総年収は、年俸3000万ドル(約40億円)とCMなどのスポンサー収入3500万ドル(約47億円)を合わせ、6500万ドル(約87億円)でメジャーリーグ史上1位となりました。今季オフでFAになれば、年俸も上がり総収入は9500万ドル(約126億円)に到達する見込みで、世界のアスリート全体でトップ5入りする可能性まで出てきています」(在米ジャーナリスト)
6年ぶりに開催されたWBCで日本代表を世界一に導き、大会MVPを獲得したエンゼルスの大谷翔平選手(28)。2年連続で開幕投手を務めた3月30日のアスレチックス戦では、「3番・投手」の二刀流で先発出場。投手として6回93球を投げ、無失点10奪三振と好投。打者としても1安打を放ち、観客から圧倒的な大声援を受けていた。
「スポーツ経済分析で知られる関西大学の宮本勝浩名誉教授によれば、大谷選手の活躍による昨年の日米での経済効果は約457億941万円と推定されています。宮本教授は、日本国内のWBC経済効果を2月下旬に約596億円と試算していましたが、大会が想定外に盛り上がったため、3月22日に58億円上方修正して654億円にのぼると発表しました。それを踏まえると、大谷選手の今年の日米での経済効果は500億円を超えることは間違いないでしょう」(前出・在米ジャーナリスト)
現在、製薬会社「興和」、米国IT企業「セールスフォース」などに加え、今年から化粧品会社「コーセー」、米国スポーツ用品大手「ニューバランス」が大谷とスポンサー契約をしている。日米の広告業界から熱視線を向けられる大谷だが、米国の広告出演料は日本とは桁が違うようだ。在米広告エージェントはこう語る。
「日本では彼のCM出演料相場は年間3億円程度ですが、米国『ニューバランス』との契約金は過去最高額となる50億円といわれています。いま、大谷選手は計13社とパートナーシップ契約を結んでいますが、米国企業との契約の場合は、単なる広告契約だけではなく、商品開発に関与することもあるため、高額化するのです。WBC直後から、米国では約30社が新たに大谷選手と契約交渉し始めたと聞きました。契約金は最低でも10億円だそうです。
彼の人気をさらに高めたのは、やはりWBC決勝戦。最終回、大谷投手がエンゼルスのチームメートで国民的人気を誇るマイク・トラウト選手を三振に打ち取った劇的なシーンで、野球ファンだけではなく“世界のオオタニ”として米国全土で人気が一気に爆発したのです」
■広告主にとっても大谷はスーパースター
ロサンゼルスのマーケティング会社「MIW」代表取締役を務める岩瀬昌美さんは言う。
「私はロスに住んで20年になります。全盛期のイチロー選手ですら、スポンサーはほぼ日本企業のみでした。大谷選手はいままでになく海外のスポンサーがついているところがすごいんですね。私は広告の仕事を長年やっていますが、大谷選手については悪評が何も聞こえてこないんです。自宅と球場の往復生活で遊びにも行かず、それなのにいつもニコニコと楽しそう。好感度が高く、広告主にとって安心安全のスーパースターなんです」
大谷人気は全米でも加速している。特に大谷が決勝戦直前、ベンチで日本のチームメートたちに、
「(米国チームには)野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う。憧れてしまっては超えられないので、僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう!」
と激励した言葉は、米国民の心にも響いたのだ。
「大谷選手のこのスピーチは『ニューヨークポスト』『ロサンゼルス・タイムズ』『FOX NEWS』などが全文を報道したほど。彼のインスタグラムのフォロワー数もWBC前は約190万人だったのが、3月末現在、約3倍近い約540万人にまで激増しました。これはトラウト選手の2.5倍のフォロワー数で、米国でも国民的な人気となったといえるでしょう」(前出・在米ジャーナリスト)
WBC視聴者数は全米で520万人と過去最高。決勝戦の視聴率も’17年のWBCより69%急増した。この全米のフィーバーぶりは大谷が6年前、エンゼルスに移籍するニュースが報じられたときには考えられなかったと前出の岩瀬さんは振り返る。
「正直、私の周囲では『オオタニって誰?』という空気が流れていました。二刀流への挑戦へも懐疑的な声が多かったですし、『また新しい日本人選手が米国に来た』というぐらいの評判でした。近年は米国民の間では野球はマイナーなスポーツと認識されています。アメフトとバスケ、サッカーが人気の主流ですから……。
それがいまや、野球に興味のない米国人でも大谷選手とトラウト選手の名前は知っています。米国人は成功した人に対するリスペクトってすごいんです。努力が見えての結果ならばなおのこと。大谷選手は若くして米国に来たことで米国的なニュアンスをうまく表現できるところが人気なのかもしれません。WBCでのグラブや帽子を投げるしぐさはもう日本人のものではないんですよね」
■米国民がもはや大谷に“恋をし始めている”理由
岩瀬さんは米国民がもはや大谷選手に“恋をし始めている”理由についてこう分析する。
「大谷選手は球場に落ちているゴミを拾い、不調なときもベンチで暴れたりしない。特に米国人の50歳ぐらいの母親たちからすれば、“よくできた、かわいい息子”みたいな存在なんです。そして大谷選手には、米国の“ノスタルジックな野球少年”を思わせるクリーンなイメージもあるのです。
とにかく野球をするのが大好きで、いつも爽やかな笑顔で、勝っても負けても腐らない。そういう往年の野球少年的オーラを大谷選手は放っており、米国民は自分の子どもを応援するように大谷選手を応援してしまうのです」
来季のFA移籍が取りざたされている大谷。NY在住の邦人女性は、米国民の誰もがその移籍先に注目していると話す。
「野球は地元愛が強いという特性がありますが、大谷選手はNYでも絶大な人気です。NYのテレビ局『ESPN』では、大谷選手が米国のアスリートで初の“5億ドルプレーヤー”になるという話題でもちきりです。’19年の開幕前、エンゼルスはトラウト選手と12年4億2650万ドル(約567億円)の契約を交わしました。これがMLBでは歴代最高額です。米国のアスリートで最も高いのは、’20年に10年4億5000万ドル(約599億円)の契約を結んだアメフトのパトリック・マホームズ選手ですが、大谷選手はその額を更新できると見られているのです。人気球団・ドジャースが“11年5億ドル”で巨額契約するという噂がまことしやかに流れています」
前出の岩瀬さんも言う。
「ロサンゼルスっ子にとって野球チームと言えば断トツでドジャース。だから大谷選手がドジャースで早くプレーしてほしいというのが本音なのです。本業の野球の契約料と広告収入も合わせれば、大谷選手が1千億円を軽く突破することは、そう遠くない未来だと思います」
アメリカンドリームの実現が何より大好きな米国民。大谷選手の“桁違いの活躍”から日々、目が離せなくなっているという。
「今年の開幕戦のように、二刀流を驚異的なレベルで維持し続ける大谷選手に、偉人ベーブ・ルースの姿を重ね合わせる米国民たちもどんどん増えてきています」(前出・在米ジャーナリスト)
大谷がどこまで進化を遂げるのか、いまや全米が固唾をのんで見守っているーー。