童謡さながらに「あなたの “お席” はどこですか」ーー。
衆議院本会議場で “事件” が起こったのは、2月22日のことだ。「令和4年度予算案」の決議のため、議場に姿を見せた二階俊博元幹事長(83)だが、なぜか自席と反対側の方向に歩きだした。やがて、キョロキョロと周囲を見渡し、行ったり来たり。どうやら自席を見失い、国会内で “迷子” になってしまったようだ。
「おそらく昨年10月の改選前まで座っていた自席に向かったのでしょう」(政治部デスク)
そこに助け舟が出される。村上誠一郎元内閣府特命担当相(69)が声をかけると、二階氏は少し安心した表情になった。村上氏に背中を押されて案内されると、正しい自席に座ったのだった。
まるで “老老介護” のようなこの状況だが、じつは本誌が目撃したのは2度め。昨年12月15日の本会議場でも二階氏は自席を見失い、同様に村上氏に案内されている。さらに2月22日には、採決のために演壇付近まで下りて戻っていく際にも自席を見失うような様子が見受けられたのだ。
村上氏の事務所に尋ねると、秘書を通じて「いつもお世話になっているので、ご挨拶させていただいただけです」と、二階氏に気を遣ったようなコメントがあった。自民党関係者は、二階氏の体調面についてこう話す。
「足元がおぼつかないときがあり、弱っているように見えるんだと思います。記憶力がてんで駄目ということはないですが……ただ、幹事長在任時の党幹部4役会議では側近の林幹雄幹事長代理も出席して、二階氏の発言を補足することはありましたね」
現在、自民党では「国土強靭化推進本部長」という肩書になった二階氏。精力的に党本部の本部長室を訪れているというが、「なぜか日曜日の午後に党本部に現われたこともある」(同前)のだとか……。
奇しくも、2度めの “迷子事件” を起こしたこの日は「志帥会」(二階派)がクローズアップされた。片山さつき参議院議員(62)の「退会騒動」だ。
片山氏は昨年12月24日に二階氏と面会し「年内で二階派を退会します」と伝えたと主張。一方で、二階派は「相談がなかった」として、武田良太前総務相(53)ら幹部の連名で片山氏に「退会勧告」を出した。二階派議員の秘書が話す。
「片山氏は次の参院選で、中川雅治さんの引退で空く東京選挙区での出馬を狙っている。中川さんが所属する安倍派に移籍したほうが公認の根回しをしてもらえると踏んで、二階派からの移籍を前々から相談していたようだ。しかし、その相談相手がよくないよ。世耕(弘成)氏なんだから」
和歌山県選出の参議院議員である世耕氏は、衆議院への鞍替えがたびたび噂され、二階氏の地盤「和歌山3区」からの出馬に色気を見せている二階氏の “天敵” だ。
「二階派 “番頭” の武田さんは、片山氏と世耕氏との密約を耳にして大激怒。“片山さつきの乱” は派閥間の面子の問題なんだよ」(同前)
ただ、前出のように片山氏は二階氏にきちんと面会して退会を伝えたと主張している。前出の秘書は「わからない。まさか二階氏が忘れていることはないとは思うが……」と話す。
片山氏の退会もあり、党内第5派閥に落ちた二階派。だが、二階氏はまだ意気盛んだ。
「いまでも親しい記者に『その気になれば、岸田(文雄)なんか1週間以内に倒せる』と言っています。実際に選挙での集票力は強い。『GoTo』事業で話題になったように、観光業界のドンとして知られていますが、故・野中広務氏から引き継いだ『全国土地改良事業団体連合会』会長も務めていて、建設、農業土木方面の大票田も持っている。団体票がモノをいう参院選では存在感を強めてくるでしょう」(前出・政治部デスク)
その威勢のよさには “迷い” はない?
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