「安倍派からなかなか応援に来ないんだよ」と、石川県の地元政界関係者はこぼした。
2月24日告示、3月13日投開票を迎える石川県知事選挙が不気味な様相を呈している。自民党から前衆議院議員の馳浩元文科相(60)と、前参議院議員の山田修路氏(67)の2人が立候補したのだ。しかも2人とも現在は安倍晋三元首相(67)が会長を務める「清和会」(安倍派)に所属していたという “大内紛” 状態だ。
「地元県連の8割近くは山田氏を支持している。本来なら安倍さんが調整して候補を一本化すべきなのに、馳氏の後ろにいる森喜朗元首相(84)に気を遣ってできないんだよ。その森さんは清和会の3代前の会長だったわけで、それなのに “保守分裂” なんだから森さんの “政治力” もいよいよなくなったわけだね」(自民党関係者)
もともと馳氏は森氏が直々に政界へスカウトした “子分” だが、「森さんは県の地元議員にまで電話をかけまくっている」(地元政界関係者)というから、相当な焦りが窺える。
党内最大派閥の安倍派だが、安倍氏の影響力が派閥の隅々に行き届いているかは疑問が残る。安倍派の議員が話す。
「じつは、石川県知事選に出馬する意欲を見せた山田氏を、安倍さんが宥めようとしたことはあったんです。でも、安倍さんの宥め方というのが、派閥会合後に立ち話で『ちょっと、困っているんだよ』と切り出すようなもの。さすがに『そんな言い方で収められる話じゃないだろう』と派閥議員たちも呆れました」
首相退任後に派閥の領袖として出戻った安倍氏だが、老いた森氏の顔色を窺い、派閥議員からは呆れられ……と以前の独裁者ぶりは嘘のようだ。
そして、影響力低下が露見した重鎮がもう一人いる。麻生太郎副総裁(81)だ。率いる「志公会」(麻生派)では “離脱ラッシュ” の前兆が……。
「2月17日の麻生派総会を、派閥会長代理の佐藤勉衆議院議員(69)が欠席しました。佐藤氏に続いてこのまま、昨年の自民党総裁選で河野太郎氏を支持した中堅、若手の数人や、今井絵理子参議院議員(38)も退会するとみられています。
麻生さんは次の選挙に出ないという話が出ていますし、麻生派は麻生さんの “人徳” だけで持っていた派閥。尻すぼみの組織より、勢いのある組織に移りたい議員も多いのでは」(政治部デスク)
こうした凋落を尻目に “上へ上へ” 向かう男がいる。安倍、麻生両氏によって首相の座から追い落とされながら、本誌でも既報のとおり、最近 “派閥結成” への動きを強める菅義偉前首相(73)だ。
「今回の佐藤氏ら麻生派の退会者は “菅派” に合流するとみられている。これまでの麻生さんなら激怒したような “移籍劇” だが、そうもできない事情がある。麻生さんは自分の最側近で、先の総選挙で落選した松本純氏(71)をもう一度、神奈川1区から出馬させたいんだ。
だから麻生さんは、“神奈川のボス” として君臨し、公認にも影響を及ぼす菅氏に今は頭が上がらない。菅氏はそれを見越して強気に動いてきているようだね」(麻生派議員)
ワクチン3回め接種の遅れぶりと比較して、迅速に2回接種の態勢を整備したとして、今、再評価されている菅氏。“菅派” が結成されれば、政局になるとの見方もある。それは岸田文雄首相(64)が今夏の参院選で狙う野望も関係する。
「最大派閥でありながら、岸田政権では “非主流派” になっている安倍派の力をさらに削ぐために、岸田首相は『安倍抜き』選挙で参院選に勝利し、党内に『俺にはもう安倍さんは必要ない』と示したい。そこで思惑が一致してくるのが、安倍さんに追い落とされた恨みを持つ菅さんだ。岸田首相は連携を探りつつある。
一方、安倍さんも “非主流派” としての対抗策で他派閥との連携を狙っているが、もともと宏池会出身で、自派を『現・宏池会』の岸田派と統合させることも考えている麻生さんと手を組めば、岸田首相への圧力は弱めざるを得ない。
そこで『菅なら動かせる』と、菅さんの本心など考えずに派閥結成をけしかけている向きがある。つまり、菅さんが権力闘争の主導権を握る状況になっているんです」(前出・自民党関係者)
安倍氏に続く “再登板” 政権も夢物語ではなくなってきた!?
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