「ドイツとスペインが有力なのは確かだが、コスタリカはどんなサッカーをするのか、イメージし難いところに怖さがある。日本は前回のロシア大会でのパフォーマンスはよかったし、今では代表選手の多くが欧州でプレーしている。9月のドイツ遠征でのアメリカ戦(〇2-0)ではプレッシングが利いていたし、攻撃のバリエーションも以前に比べ増えていただけに、どんな戦いをするか楽しみだ」
「スピードがあって、ドリブルでの仕掛けだけでなく、パスやシュートもできる私好みの選手。ドリブルと見せかけて、アウトサイドでパスを出すなどトリッキーなプレーもあるし、ペナルティエリア付近でボールを持ったら、ドイツのDFはやりにくいはず。中盤では、シュトゥットガルトで主将を務める遠藤航(29)が、ボランチとして守備をするだけでなく、ボールを前に運ぶプレーもうまくなっているだけに、キーとなる選手だろう」
■ドイツの選手はそれほど日本を研究しない
「それは間違いない。ドイツ代表のほとんどの選手はブンデスリーガでプレーしているので、日本の選手は特徴をよくわかっているし、自信を持ってプレーできるだろうからね。以前の日本人選手はシャイだったけど、たとえば堂安は好調のフライブルク(14節を終えてリーグ3位)でも、まわりの選手を鼓舞しながら力強いプレーを見せている。ドイツも、簡単に勝てるとは思っていないはずだ」
「日本の選手は、ドイツの映像をたくさん見て研究するはず。ただ、ドイツの選手はスタッフから最低限の情報は得ても、それほど日本を研究することはないだろう。リスペクトしつつも、ドイツ人は日本人ほど勤勉ではない。W杯が開幕すれば、対戦国の試合はチェックするだろうが、日本対ドイツはグループEの初戦だけにチャンスかもしれない。また、第2戦のスペイン戦を100%のコンディションで迎えたいドイツは、初戦からエンジン全開でくるかどうか」
「ディフェンスラインを押し上げ、前線からプレッシャーをかけ続ければチャンスは来る。ドイツは最近、ボランチのところでミスが出るし、CBのジューレはスピードがないので、縦に速く攻めることは有効。ボールを奪ったら、素早く5秒でどう攻めるか。それができたらおもしろい」
「ハヴァーツ(23・チェルシー)は要注意だね。本来はMFだけど、トップでもプレーできる。ポジショニングが巧みで、背が高くヘディングが強いのに加えて、パスもシュートもうまい。ボールを受けてから一度パスをして動きだすため、マークするのは簡単ではない。
■今の若い選手にもう “ゲルマン魂” はない
「ハヴァーツと同じで、中盤で一度ボールを受けてから出ていくのが鎌田のスタイル。フランクフルトでも点を取っているし(チームトップの7ゴール)、もう少し左足がうまくなれば、バリエーションが出てくるはず。センスはあるし、そうなればもっとゴールできる可能性がある」
「何も起こらなければドイツとスペインが突破する。でも、やっぱりドイツと日本に通過してもらいたい。だから、希望をこめて1位ドイツ、2位日本、3位スペイン、4位コスタリカと予想する。ドイツは初戦で日本と引き分けても、スペインとコスタリカに連勝すれば勝ち点7で首位通過できる。日本も初戦でドイツと引き分ければ、2戦めでコスタリカに勝って、3戦めでスペインと引き分けられれば勝ち点5で2位通過できる」
「私が現役のころは仲間を尊敬しながらも、妥協せずに自分のよさを発揮するために、味方同士でよくぶつかったもの。でも、時代は変わった。そうした変化は日本も一緒だろうし、今の若い選手に “ゲルマン魂” はもうない。私としては、とにかくドイツ相手に、日本がどう戦うのかに興味を持っている。どういう結果になっても点は入りそうだし、2-2なんてスコアもあるかもしれないね」
ピエール・リトバルスキー
1960年4月16日生まれ 西ベルリン出身 西ドイツ代表(現ドイツ代表)としてW杯に3度出場し、優勝1回(1990年)、準優勝2回(1982年、1986年)。1993年に来日し、ジェフ市原(現ジェフ千葉)などでプレーし、監督として横浜FC、アビスパ福岡などを率いた経験も。現在は、ブンデスリーガの強豪ヴォルフスブルクのスカウト部長を務める
写真・渡辺航滋、AP/アフロ
取材&文・栗原正夫