「いまやほとんどの自動車保険につけることが可能です。自分が事故の被害者になり加害者側に賠償を請求する場合や、互いに過失のある交通事故で過失割合に納得できない場合、弁護士に相談します。その際の相談料や着手金など、弁護士費用を最高で300万円まで負担してくれる特約です。年額2000円程度のオプションなので、契約者は年々増加しています」(業界紙記者)
「具体的には、アクサ損保さん、SBI損保さん、ソニー損保さんですね。実際に何件もお断わりしています」
「正直、この3社は弁護士報酬が安いんです。特に、少額の物損事故の場合、弁護士が赤字になる場合もあります。腕が立つ人気の弁護士ほどこうした “安い” 損保からの案件は避けるため、仕事がない独立したての弁護士などが受任することになります」
「LAC基準には、2つの料金体系があります。ひとつは、着手金と報酬金を合算するシステム。もうひとつはタイムチャージと呼ばれる時間制報酬システム。前者の場合は、まず最低着手金として10万円いただきます。そして報酬金は、少額事故の場合は『経済的利益』の16%です。
『経済的利益』とは、たとえば加害者側が20万円の賠償金しか提示してこなかった場合に私が弁護士として活動をして30万円にできたとすると『10万円を勝ち取った』といえますが、この10万円が『経済的利益』になります。
「その場合はタイムチャージで報酬を計算します。1時間2万円が基準額とされているので、先ほどの例でいえば、6時間以上かかればタイムチャージのほうが “得” になるんです。何千万円の高級車を壊されたとか、高額な案件なら前者でもいいですが、低額であればあるほどタイムチャージが必要です」
「そうなると、お受けできませんよ。それに、たんなる料金設定の問題だけじゃないんです。アクサ損保はタイムチャージがないだけですが、SBI損保やソニー損保は経済的利益の設定額まで値切ろうとしてきて揉めることがあります。担当者にもよるとは思うのですが、弁護士仲間のあいだで、よくない評価です」
「確かに東京海上日動は支払いがいいしトラブルもないです。でも、そもそも少額の物損事故は利益というより、新たな顧客を開拓するとか、困っている人を助けるという意味で依頼を受ける弁護士がほとんどです。それに、アクサはそのぶん保険料が安いともいえます。結局総合的に判断するしかないと思います」
写真・朝日新聞