3月9日に投票がおこなわれる韓国大統領選挙。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の後継を決める今回の選挙には14名が名乗りをあげたが、事実上、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏と、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏の一騎打ちとなっている。
「コロナ対策をはじめ、経済格差や対北朝鮮政策などをテーマに論争が起きていますが、主要2候補の支持率は僅差です。韓国社会世論研究所が2月21日に発表した最新の支持率は、李候補が43.7%で、尹候補が42.2%。これまでも2人の支持率は逆転を繰り返し、投票日までどう転ぶかわかりません」(国際ジャーナリスト)
一方で、近年稀に見る “スキャンダル合戦” の様相も呈しており、「史上最も好感されない選挙」と懸念を示している韓国メディアもある。前出の国際ジャーナリストが、こう語る。
「野党・尹候補の妻である金建希(キム・ゴンヒ)氏には、株価操作の疑惑が取り沙汰されています。昨年11月、韓国の輸入自動車大手『ドイツ・モーターズ』の会長が、62億円もの株式の違法売買で逮捕されました。実業家で、巨額の取引相手だった金氏は、株価操作の資金を提供した疑いがもたれています。
また、金氏は2007年、私立大学の兼任教授に就任した際、職歴や受賞歴を詐称していたことが明らかになっており、謝罪会見を開いています。
尹氏は前検事総長で、文政権と対立したことから保守層を中心に支持を集めましたが、妻の疑惑で失速した形です」
与党の李候補には、さらに多くの疑惑がある。
「李候補はもともと城南市長を務めていましたが、市長時代の2014年から始まった都市開発をめぐって強い批判を浴びています。官民合同事業に参加した企業が巨額の利益を得たとされますが、開発に携わった民間業者が公開した音声ファイルに『李在明ゲート』という表現があったことから、李候補が不正に関与したのではないかと追及されているのです。
このほか、有名女優と14年間不倫関係にあったこと、職権を乱用して兄を病院に強制入院させたことなどが批判の対象になっています。
李候補は、2018年、京畿道知事になりますが、妻・金恵景(キム・ヘギョン)氏は、道が発行した公的なクレジットカードを使って私的な食事代を出したり、部下の公務員を私的な雑用に使ったとの疑惑があり、公式に謝罪しています。
さらに、息子が常習的に違法賭博をしていたとして、李候補はこちらも謝罪。息子には売春疑惑も報じられていますが、売春に関しては選挙対策委員会が事実でないと否定しています」(同)
一連のスキャンダル合戦にともない、ついには “呪い” まで登場する事態となった。
李候補の選対委員長を名乗る人物が、2月12日、「罰を受けるべき人間に五殺を。八つ裂きにしなければ」とFacebookに投稿。「五殺」とは、かつておこなわれた、罪人を処刑したのちに五体をバラバラにする処刑法だ。
同じ人物が、その翌日、鋭利な道具で滅多打ちにした “わら人形” の写真を投稿。顔の部分には尹候補の名前が書かれており、ライバル候補に呪いをかけたとして話題になった(現在は削除済み)。
一方の尹候補も、祈祷師との交流が囁かれている。2018年、ある祈祷師が主催する宗教的儀式で「皮を剥がした牛」を生け贄に祈祷したことが明らかになっている。その祈祷師はいまも党内で一定の影響力を持っているとされ、非難が集まっている。
混沌を極める選挙戦だが、気になるのは、両候補者の対日政策だ。前出の国際ジャーナリストが話を続ける。
「韓国の政治家は、反日のスタンスをとることで、手っ取り早く国民の人気を得ることができます。現在の文政権は、ついに最後まで反日的態度を改めることはありませんでした。
尹候補は文大統領の対日政策を強く非難し、『歴史問題や経済、安全保障面などを網羅した包括的な解決策を模索する』と発言しており、対日姿勢はあまり明確にはしていません。ただ、反日の英雄・尹奉吉の記念館で会見するなど、親日派とは言えないでしょう。
一方で、李候補は、2015年に結ばれた日韓の慰安婦合意の修正を掲げるなど、すでに反日的なスタンスが目立っています。支持率が低下したこともあり、2月16日には、福島原発の汚染水の海洋放出問題に対し、強硬姿勢を見せました」
3月9日に明らかになる次期大統領。はたして、李在明と尹錫悦の、どちらの “呪い” が威力を発揮するのか。
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