「ボブスレーの選手選考は、全国でおこなわれる共通トライアウトで、2つの海外基準の体力テストをクリアしなければいけません。現在の代表選手4人、補欠選手1人のうち、2つともクリアしているのは3人。1つクリアしているのが1人で、それが補欠選手です。もう1人はいずれの基準もクリアできなかったのに代表選手になっています。本来、2つの基準をクリアした者だけが選ばれるべきですが、そうはなっていません。選手選考は連盟の会長に骨抜きにされています。また、2つの基準をクリアしていても、会長に好かれていない選手は『パイロット』という先頭に乗るポジションに起用されていないのが実情です」(ボブスレー日本代表選手のひとり)
「ボブスレーは、国際大会に出場してポイントを稼ぎ、その結果で五輪の出場権を獲得します。ポイントを稼ぐための国際大会には、北アメリカカップとヨーロッパカップの2つがあります。前者は出場チーム数も少ないうえに、実力的にも我々が互角に戦える大会でした。ところがそこには出場させられず、我々はわざわざ強豪チームが多く出場するヨーロッパカップに出場させられました。連盟には最初から北京五輪に出場しようという意志がなかったとしか思えません」
「海外遠征に行っても、1日1000円の日当しか支払われませんでした。ボブスレーのコースは国内には長野にしかありませんが、現在は使用されていないため、1年の大半は海外遠征をしなければなりません。にもかかわらず日当が半分しか支払われておらず、1日1000円の移動費も支払われていません。私たち選手は、普段はアルバイトなどで生計を立てています。海外遠征に行くのに持ち出しも多いのに、連盟は『スポンサーを見つけてこい』と無茶苦茶な要求すらしてくる始末。これがまっとうな競技連盟のすることでしょうか」
「そりだけでなく、遠征の際に使用する車も、北野建設の所有です。国内では、東京都大田区の企業が中心になって造る『下町ボブスレー』が話題になりました。僕ら代表選手がそのプロジェクトに参加して一緒に開発できれば、より建設的な議論を重ねて、質のよいそりに乗れたはず。でも北野建設が利権を牛耳るために、下町ボブスレーには選手はかかわることすらできないのです」
「選手のコンディションを第一に各レースでチームとしていちばん力を発揮できるチーム編成で大会に臨んでいます。北アメリカカップを回避した理由は、パイロットが北アメリカカップのコース未経験であることが大きい理由ですが、そりをドイツに保管しており、輸送にかかるコスト等も考慮の上、決定しました。
「ボブスレーのそりと運搬車は高額で、連盟での一括購入は困難なため、メインスポンサーの北野建設に購入してもらい、連盟がリース料を支払って使用しています」
「そりや車のリース自体はおこなっているが、営利目的ではありません。選手の起用や選考に関しては、選手がいろいろと不満を持っていることは知っていますが、競技委員会で公正におこなっており、社長による私物化といったようなことはありません」
「北京五輪に出場するには、最低限、北アメリカカップに出場することが必要で、ヨーロッパカップ出場を選んだ時点で、五輪には行けないと思っていた。連盟と選手がコミュニケーションを取れていない。こんな状態だとどんな選手がいても五輪出場は無理だろう。2大会も五輪に出場できなかったことは、危機的な状況だ。連盟の改革、選手選考の仕方を含め根本からやり直さないともっと厳しい状況になるだろう」